Kanon謎分析 |
99/11/09 改訂
※ このコーナーでの分析はあくまで私個人の意見感想です。こういったゲームはみなが違う世界を持っている方がいいと考えます。そう言う意味で、「こういう考えの人も居るんだ」というくらいで見て下さい。
また、このコーナーは完全にネタバレです。完全クリアしてから読むこととお薦めします。「オレは一生涯Kanonはやらねぇ!」ってひとは読んでも平気でしょうけど、そんな人はここを見てないでしょう(^^;;
序盤のシナリオ進行中に挿入される、夢で始まる詩的表現。
これは何を意味しているのか?
あゆシナリオをクリアした方ならわかるでしょう。
あゆの夢。祐一が7年前に帰った日の前日に高い木の上から落ちてそのまま意識不明に陥ったあゆ。
その夢の内容から見ても、あゆであることは疑いがないと思います。
これこそが、Kanonの世界に流れる根本。
たとえば、栞シナリオでこんなやり取りがありました。
例えば…今、自分が誰かの夢の中にいるって、考えたことはないですか?
私の、私たちの夢を見ている誰かは、たったひとつだけ、
どんな願い事でも叶えることができるんです
夢の世界で暮らし始めた頃は、ただ泣いていることしかできなかった
でも、ずっとずっと、夢の中で待つことをやめなかった…
そして、小さなきっかけがあった…
たったひとつの願い事は、永い永い時間を待ち続けたその子に与えられた、
プレゼントみたいなものなんです
勿論、これは栞の想像。空想の域を出ない話です。
しかし、夢と現実がごっちゃになっていたとしたら。
現実の世界とあゆの夢の世界がどこかで繋がっていたとしたら…?
ある程度の事のつじつまが合いそうです。
そして、あゆに与えられたプレゼント。
どんな願いでも叶えられる力。
夢
夢の終わる日。
雪が、春の日溜まりの中で溶けてなくなるように…。
面影が、人の成長と共に影を潜めるように…。
思い出が、永遠の時間の中で霞んで消えるように…。
今…。
永かった夢が終わりを告げる…。
最後に…。
ひとつだけの願いを叶えて…。
たったひとつの願い…。
ボクの、願いは…
これは、栞、名雪シナリオ終盤で、挿入されるシーン。
つまり、あゆが願いを叶えたわけです。
さながら、天使の様に。
それが、奇跡と呼ばれるもの。
では、何故願い事を叶えられたのか?
それは、「願いの叶う人形」つまり、あゆの捜し物に他ならない。
あゆの記憶は微妙に代わってしまっていて(学校の事を考えるとこういう考えが出てくる)
それを叶えてくるのは、祐一だと言うことを忘れているのでしょう。
つまり、それは本当にどんな願いでも適う人形になった。
各シナリオごとの分析
このシナリオは、拒絶と支えがテーマですね。
7年前の、あゆ落下事件(祐一は死んだものと思った)で完全に心を閉ざした祐一。
でも、それでも祐一を好きで居続けた名雪。
そして、祐一も名雪を好きだったことに気付き、二人が7年の時を越えてつきあい始
めたとき。
秋子さんの事故
文面から察するに、それは死に直結するようなものだったのだろう。そしてそのショック
から今度は名雪が心を閉ざし、全てを拒絶。奇跡に頼るしか無かった。
そして、祐一にこういう。
「…祐一、奇跡って起こせる…?」
それの答は、目覚まし時計に録音したメッセージ。
祐一には奇跡は起こせないが、側にいる。ずっと。
それが、名雪にどんな事を思わせたか?
そう、祐一が支えに成ってくれること。
そして、奇跡が起こる
それは、秋子さんの回復。
彼女はなんと言っても、病気(それも重病)という設定である。
これで、次の誕生日(2/1)まで生きられないと宣告されたのである。
そして、祐一に1週間だけ、普通の女の子として接して欲しいと頼む。
それこそが彼女の望んだものだったから。そして、栞の現実を確認して
祐一は思う
この少女は、泣くことはないのだろうか…。
それほど、笑っていた。
どうして、そんなにしてまで笑っているのか?
周りを気にして…?
そう、確かに周りを気にしている。と、いうより。
自分が泣くことで、周りの普通が消えてしまうことを恐れている。
姉にそうされたように。周りから拒絶されることを恐れている。
だから、泣かない。だから、笑っている。
そうしている間、普通で居るために。
これを、祐一は「誰も悲しませたく無かったから」と言っていましたが、これも当たりでしょう。
しかし、病気は確実に悪化。
もう助からない。この病気が治るには奇跡に頼る他はない
起こらないと言われるものに頼るしか。
そして、1/31。最後の日。
栞の病気は更に悪化。立てないほどだった。
そして、日付が変わり…別れ……。
このまま行けば、二人を待っているのは死別だった。
しかし、奇跡が起こる
起こらないはずの奇跡。
それは、栞の病気を治し、あっというまに学業復帰させるまでにいたる。
彼女は人ではない。
彼女は昔、祐一が助けた傷ついたキツネだ。
…漫画日本昔話的なシナリオではある。
楽しい日々…。
ずっと…
ずっと一緒にいられると思ってた。
ただ、一緒に居たかった。
そして捨てられたと思って…
それを考えたら許せなくなって…
これは、1/20の夜に挿入される文章。
真琴(当時狐)は、ずっと祐一と居られると思ったが、祐一は「怪我が治るまで」と思い、怪我が治ったら、ものみの丘に返した。それを真琴は捨てられたと思い、祐一が憎かったわけだ。
そして、美汐はこう言っている。
今、相沢さんは、束の間の奇跡の中にいるのですよ
そして、その奇跡とは、一瞬の煌めきです
あの子が自らの命を引き替えとして手に入れた、わずかな煌めきです
何故、そこまでして祐一と居たかったのか? おそらく傷の手当だけではないだろう。そのことについて語られては居ないので全ては想像にしかならない。
そして、美汐から次々と語られる事実。それは、確実な別れ。すべては「わずかな煌めき」、かりそめの平和だったのだと。
そして、徐々に真琴から人間らしさが失われていく中、真琴がしたかったことをやらせてあげる祐一と水瀬親子。
そして、二人と溶けかけの雪だるまが見送る、祐一・真琴の結婚式。以前、真琴が「祐一とけっこんしたい…そうしたらずっといっしょにいられる…」と言っていたのを思いだしたのだ。それほどに祐一と一緒にいたかったのだ。
タイムリミット。
その前に、泣き崩れる真琴。自分の運命を悟ったのだろうか?
しかし、奇跡は起こった真琴は戻ってきたのだ。
それは美汐が言うように、不思議な力を持った狐がたくさん集った奇跡なのだろうか?
魔物と戦い続けている彼女。
既にクリアーした方なら知っているだろう。
その魔物は舞自身。正確には川澄 舞が過去にはなった忌むべき力だということ。
その力は、自らの母を助けるときに獲得したものだったが、それが奇異の目で
見られる。人間、自分とは違ったものは遠ざける傾向がある。
そして、舞と祐一の最初の出会いは舞が人目を気にするように逃げ去った場所だ。
そして、舞は自分の力を受け入れてくれる物。つまり
友達となってくれる人を、つれてくることを願った。
そして、それが適う。
それが、祐一。
それから、毎日二人は遊ぶが、どうやら舞の力も万能ではないらしい。
恐らくは、誰か(まあ、祐一だ)を舞の元に運べる有効範囲でもあるのだろう。
舞の元から離れる祐一。しかし、離れたくない舞はこう、嘘をついた。
…魔物がくるのっ
いつもの遊び場所にっ…
だから守らなくちゃっ…ふたりで守ろうよっ
一緒に守ってよっ…ふたりの遊び場所だよっ…
待ってるからっ…ひとりで戦ってるからっ…
それでも、舞の元に来そうもないため、舞は願った。
魔物が本当に現れてくれたら
そうすれば、祐一が戻ってくると信じて祈った。
それは、叶えられた。
祐一も自分の特殊な力のため立ち去ったのか、とその力を更に忌み嫌うようになり、その力ごと、忌むべき物、戦う物としていった。
やがて、その麦畑には立派な学校が建つこととなる。
それでも、舞は戦い続ける。もはや最初の目的は覚えていない。
戦いのために戦うだけだ。
そして、自らの腹に剣を突き立てる舞。
その意図するところは何だったのか?
仮説1)
舞と魔物の命は1つだ。魔物を傷つければ、舞も傷つく。ならば、舞を傷つければ、魔物も傷つくのではないか? そのことに気付き、すでに戦えない身体で会った舞は、自らを傷つけることで戦いに終止符を打とうとした。
仮説2)
祐一の言葉を受け、舞はこれまでにない幸せを感じていた。しかし、幸せなときはいつかは終わりが来る。もう、それは見たくない。幸せだった思い出だけで良い。だから、命を絶とうとした。
仮説3)
一回、終わらせる必要があった。これは、まいと祐一の出会いで「今、終わってしまったんじゃないか…」と言った祐一に「でも、そのときから、はじめることはできる」と言い返しています。これを逆に取れば、始めるためには終わらせる必要があった……ともとれます。
……全ては推測にしか過ぎない。
その後祐一も思い出の中に逃げ込もうとするが、そこで昔の舞が現れる。これは舞の力だろう。その後、祐一は舞の力によって過去へととばされる。そして、訪れてもいなかった、場所にあらわれ、舞と対面する。そして、約束。「ずっと、舞のそばに居るよ」 と。
Kanonのメインヒロインといえるキャラだろう。
冒頭に書いたとおり、彼女は7年前に木の上からの転落事故を起こしている。
どうやら祐一は死んだものと思っているようだが、どうやら植物状態にあるらしい。
ただ、夢を見ているのだったら大脳の働きは失われていないので、ただの昏睡と
言うことになる(それで7年も覚めないというのはヘンだが)。
そして、夢の中でただ祐一を待つことになる。7年もの間。
そして、祐一との再会。しかし、お互いに最後の日のことは忘れたまま。
祐一は記憶を閉ざして、あゆはショックからだろう。
しかし、祐一と再会したことで、何かを思いだしたのだろう。探し物(=願いの叶う
人形)をはじめる、
しかし、夢と現実という不安定な世界に生きていたあゆだが、祐一の「学校が見たい
」でそれが終わりを告げる。おそらく、学校へは夢の世界の領域だが祐一と行ったこ
とで現実の世界の学校へ行ってしまう。あゆの世界であれば普通の学校がそこには
立っていただろう(祐一と決めた学校というのを記憶がごっちゃになって普通の学校と
認識していたのだろう)、そこに愕然として必死にこの世界との接点を見いだそうとする。
まずはリュックの中。その中には夢の中では教科書が入っていたはずだが、現実の
世界であるため、当然入っていない。
そして、全てを思い出す。7年前に落ちたこと。そのまま意識を失っていること。
自分が、極めて不安定な存在であること。
最後の頼みは、なんでも願いの適う人形だった。
それに頼みさえすれば、この世界に残れると信じて。
しかし、それを見つけることは出来ず、消えてしまう。
そして、思い出す。願いの叶う人形は祐一の出来る範囲のことしか叶えられないことを
そして、再び別れのシーン。
しかし、奇跡は起こった夜が明け、昏睡からあゆが目を覚ましたのだ。それは誰が起こした奇跡なのか? もちろん、あゆ自身。最後の最後で諦めずに、願いを変えなかったから、奇跡は起こった。
大きく考えて、各シナリオごとの奇跡は
あゆシナリオ | あゆの生還 |
栞シナリオ | 栞の病克服 |
舞シナリオ | 舞の回復(力の統合) |
真琴シナリオ | 真琴の生還 |
名雪シナリオ | 秋子さんの回復 |
と、なる。
素直に考えれば、全ての奇跡をあゆが起こしたと考えられる。しかし、本当にそうなのか? Kanonをじっくりやってみると、ゲーム中であゆが願っている夢を出しているのは、あゆシナリオ、栞シナリオ、名雪シナリオの3つだけで、真琴と舞に関しては語られていないのだ。
ここで、この3つの共通点を探ってみると、あゆ(は別として)も栞も、秋子さんもあゆとの面識があり、舞、真琴はあゆと直接の面識がない。(あゆと真琴は会った可能性もあるけど、すれ違い程度だろう)。そう考えれば素直に
あゆシナリオ、栞シナリオ、名雪シナリオ | 奇跡を起こしたのはあゆ |
舞シナリオ、真琴シナリオ | 奇跡を起こしたのはあゆ以外 |
となる。ここで、舞シナリオを考えてしまえば、これはあゆの力に全く頼らないで奇跡が起こることが分かる。この場合、奇跡を起こしたのは、舞自身。もしくは「舞と祐一」となる。
問題は真琴シナリオ。真琴に奇跡を起こす力がない上に、あゆとも面識がない。天野もそういう力は無さそうである。そうなると祐一に白羽の矢が立ちそうだが、いまいちピンとこない。ゲーム中で天野は、”妖狐が沢山集まれば奇跡が起きる”というニュアンスの事を言っていたが、これもいまいち眉唾ものっで、「いきなりそこでそう言われても…」という感が拭えない。しかし、もし妖狐の間で何かのドラマがあったとしたら……奇跡が起きるのかもしれない。
よく、ONE〜輝く季節へ〜とKanonはどっちが良いか? 等という話を聞くがそのまま比較するのは困難で無意味だ。それは「サメとライオンはどっちが強いか?」という質問をするのと同じ。よって、ここではそう言う比較はしません。あしからず。
1)ONE〜輝く季節へ〜を引きずったKanon
誰もが思っただろう。ONE〜輝く季節へ〜主人公の折原 浩平とKanon主人公の相沢 祐一があまにも似たような行動をとっていることに。たしかに、ONE〜輝く季節へ〜での浩平の行動には笑い、泣き、喜んだが、それをそのままKanonに持ってくるのはどうか………。また、ONE〜輝く季節へ〜でのギャグのまんまの使いまわしなどかなり目立ってしまった。
2)ファンタジー色の強かったKanon
ONE〜輝く季節へ〜では「えいえんのせかい」という設定につきたと思う。それは、現代物にファンタジーっぽさをうまく融合させていたと思う。これに対してKanonはよりファンタジー色の強いものとなっている。それは、あゆの夢、真琴の狐、などが強かったからだろう。これが成功したかどうかは、賛否両論あるだろう。
3)ONE〜輝く季節へ〜での欠点を………
ONE〜輝く季節へ〜では、その「えいえん」という設定で最終的に全てのシナリオを動かしていた。もちろん、素晴らしい設定ではあったのだが全てが同じ展開になってしまうので、ワンパターンとの声もあった。これに対して、Kanonではテーマであるのが”思い出”or”約束”(場合によっては希望)となっていて、強く表面上に出てこないので、シナリオを自在に変化させることが出来る。これならワンパターンとは感じないだろう。
4)MOON.
思ったのは、ONE〜輝く季節へ〜よりもMOON.色的な要素も多いような気がしたからだ。特に舞シナリオではそれを強く感じた。そう言う意味では
Kanon= (X*ONE〜輝く季節へ〜+Y*MOON.)/Z
と表記出来るかも知れない。X・Y・Zはその人によって違ってくるだろう。
5)総論
Kanonは確かに素晴らしい作品だが、やはりそこここにONE〜輝く季節へ〜の雰囲気がプンプンと臭ってしまう。KanonはONE〜輝く季節へ〜の手直しというか、焼き直し的な作品となってしまっている。それ故に、ONE〜輝く季節へ〜を越えたとも、ONE〜輝く季節へ〜には及ばないとも言える作品になってしまっている。
勿論、全てを払拭した作品を作ることは出来ないだろうが自作では少なくとも、主人公の性格くらいは全く新しいのにして欲しい。(と、こんな所に書いてもKEYに届くはずもないのだが(^^;; )
注! このコーナーを見ると、正常にKanonで遊べなくなる可能性があります!そう言うのが嫌な人はこれより先に進まないほうが無難です。
ほんとうに、いいですね?
警告はしたからね?
さて、誰もが思っただろう。「他のキャラに進んだときあゆはどうなるのか?」。概ね24日頃に立ち去る旨をつげられ、一部シナリオでは夢は終わることになっている。夢か終わる方法は二つ。
1つは、目覚めること。あゆシナリオはこれによって夢が終わり、目覚めている。ということは、他のシナリオではこの方法では無いことになる。と、なるともう一つの可能性。
月宮 あゆの死亡
である。仮にあゆが植物状態であったものと仮定すれば(だったら夢は見ないのだが、そんな細かいことを設定してもしょうがないだろう)、植物状態の平均余命は三年。まれに十年以上生きる可能性もあるので、七年たってから死亡するというのは十分考えられるケースである。
では、他のシナリオはどうなのか?
栞シナリオでハッピーエンドでは見事に病気を克服しているが、栞BADENを見た人も居るだろう。間接的な表現であるものの、それは、美坂 栞の死亡を意味している。つまり完全に奇跡に頼る必要があったわけで、結果は、祐一が他のキャラを選んだ場合も、やっぱり栞は死亡したものと考えるのが普通だろう。
真琴シナリオ。これも真琴シナリオを間違えて進むと入院となりそれっきり。他のキャラを進めた場合も、一回目の発熱後に祐一の前から消えてしまう。美汐の話を聞くと一回目の発熱で消える可能性は十二分にあり、これもこのまま沢渡 真琴は消えたものと考えるのが妥当だ。
これに対して、舞や名雪は直接に死などに結びつかないので(舞も祐一が絡まなければ、あの均衡のままで、秋子さんも事故に遭う必然性はない)他のキャラをクリアしても、救われる余地は残っているが、あゆ・栞・真琴は冷酷な三者択一をしなかればならない。ONE〜輝く季節へ〜では全員が救う余地があった(そのためそう言うSSも多く出たことだろう)
正直なはなし、シナリオで魅せるゲームだけに、こういう設定はかなり、苦しくこの事に気付いてしまうとゲームと割り切って考えないと苦しくなってしまう人も多いだろう。……いや、おれもその一人なんだが……。