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※ このSSは、KEY制作のKanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。
………暖かかった。
寒くも無く、暑くも無く…。
私の一番好きな、環境だった。
もし、天国というものが存在するならこんなかんじなんじゃないかと思う。
でも、暗い。
その暖かさに反して、世界は真っ暗だった。
天国がどの位明るいかなんて考えても居なかったけど、もっと明るくても良いんじゃないかと思う。
ひょっとしたら、目を閉じているだけかもしれないけど、開けるのも面倒くさい。
とりあえず、気持ちはいいからいいや………。
あれ? 頭が重い。
あんまり、気持ちいいから気づかなかった。
しかも、息苦しい……。
もしかして、今までの気持ちよさはつかの間で本当は、地獄なんじゃ…?
そんなの堪らない。
私は、地獄に落ちるほど、悪い事はしてないっ!
………っていうか、いつ死んだのっ!
がばあっ!!!
あまりの息苦しさに、起き上がる。
起き上がる…?
急に目に入っていた太陽の光が目を刺激して眩しい。
どこだろう? ここ……。
薄目をあけながら、ぐるっと見渡してみる。
と、あしの所に丸くて暖かいのがおいてあった。
にゃー
その物体が、猫のような声を出す……。
猫のような?
いや、それは猫そのものだった。
真琴「って、ぴろじゃない!」
私が、そう呼ぶとぴろは腕を肩をつたって、頭の上にちょんと乗っかった。
息苦しかったのは、ぴろが顔に乗っていたからみたい。
真琴「あははっ、ぴろ戻ってきたんだーっ!」
もう、戻って来ないかと、思ったけどあいつのいうとおりちゃんと戻ってきた。
あいつ……あ、そう相沢祐一だ。
私は、だいぶ頭も回るようになってきたので、立ち上がってみる。
ここ知ってる。
私がずいぶん長い事いた場所だ。
町全体を見下ろせる場所。
それ以上は、思い出せないけど。
ここでは、いろいろな事があった気がする。
悲しいことも、楽しいことも……。
でも、私はどうしてこんな所にいるんだろう?
くぅ〜
……しかし、そのことを考えるよりも、空腹の方が先に来る。
真琴「ぴろ、肉まん食べよ」
ネコ「ぅにゃ」
私は、木の根っこに何度か躓きそうになりながら道を下
天野「……人が居ますね」
天野が、ぽつりと言った。
祐一「そりゃ、今年の7月に人類が滅びない限り人はいるだろ」
天野「そう言う意味ではないです」
今日は、俺が強引に天野を商店街へと引っ張ってきた。
人混みはほんとうに苦手なようだったが、なにかきっかけがないとそういう中に入っていけないだろうから。
祐一「で、天野はどこか行きたいところはあるのか?」
天野「人が居ないところ」
祐一「………」
天野「冗談ですよ」
いや、天野が言うとまったく冗談に聞こえない。
天野「相沢さんにお任せします。」
ほとんど来ないのでどんな店があるかも知らないと言うことか。
祐一「わかった、とりあえずブラついてみるかぁ」
もとより、目的なんかはない。適当にあるいてみる。
祐一「しかし、腹が減ったな」
天野「私は減っていませんけど」
祐一「じゃ、そこらの店であるきながら食える物でも買うかぁ」
すると、無意識に肉まんを探しているから不思議な物だ。
祐一「肉まんは売ってないな…」
天野「春になりましたから」
春……あいつが待ち望んだ季節だ。
祐一「じゃあ……」
と、食える物を探していると。
声「あぅーっ、肉まんないよぉ」
耳に入ってきた声。
祐一「聞こえたか?」
天野「はい…?」
聞こえなかったらしい。
と、いうことは俺の幻聴か何かか。
肉まんを考えてたからそんな声を思い出していたのかもしれない。
声「どうしようか、ぴろ?」
そうそう、こんな感じでネコに話しかけて……。
そして、そいつが目の前にいた。
祐一「………」
真琴「………」
天野「………」
祐一「………」
真琴「………」
天野「………」
祐一「………」
真琴「………」
天野「………」
と、だっ!という感じで真琴が走り去っていく。
祐一「まてっ!!」
慌ててその背中を追いかける。
真琴。
一卵性双生児の双子でも居ない限り、あいつは真琴に違いない。
祐一「くそっ、どけって!」
しかし、急に人混みでごった返し、真琴の姿を見失ってしまった。
祐一「はぁ…はぁ…」
あいつ、………一体何が?
急な事態に頭が回らない。
天野「相沢さん」
やっと追いついてきたのか、天野が俺に訊いてきた・
天野「今のは…」
祐一「真琴だ、間違いない」
そういって、辺りを見渡す。
あいつはそんなに足が速くない。
なのに、見失ったと言うことは、どこかの店に入っている可能性が高い。
天野「あり得ませんよ」
ぽつりと言った。
祐一「じゃあ、さっきのは何だって言うんだ」
一人なら幻覚でも見たと。すまされてしまうかも知れないが、二人同時だ。
天野「それは…」
沈黙してしまう。
そうだった、天野も俺と同じ事を経験しているのだった。
天野に起こらなかったことが、俺には起こった。
それを考えているのだろう。
ネコ「うにゃあぁ!」
祐一「ぬおおぅ!」
突然の、気持ち悪い感覚と声に驚くとそれは、ぴろだった。
そういや、さっき逢ったときにぴろを頭に乗せていた気がする。
ネコ「にゃぁ」
そう鳴くと、路地裏の方へと入っていった。
祐一「よし、道案内頼むぞ」
なんとなく、そんな気がした。
店と店の1メートルも無いような隙間を奥へと入っていく。
当然の事のように天野もついてきていた。
祐一「喜べ、お前の好きな人の居ない場所だ」
天野「……汚いところも嫌いです」
そして、真琴はそこにいた。
突き当たりの所に、ちょこんとしゃがんでいた。
祐一「よぅ、真琴」
真琴がゆっくりと顔を上げる。
真琴「あぅ…」
と、すぐに隠してしまう。
祐一「なんで、…逃げたんだ」
何かがこみ上げてくるのを、必死に隠しながら冷静に話しかける。
真琴「わかんない、どうしたらいいか、分からなくなって…」
相変わらず、人とやっていくのが下手な奴だ。
祐一「…それに、帰って来たときはなんて言うんだ?」
真琴「帰って…?」
再び顔を上げる。
祐一「そうだ、お前はまた水瀬家に帰って来るんだからな」
真琴「真琴が?」
祐一「お前以外に誰が帰って来るんだよ」
真琴が立ち上がる。
祐一「結婚しただろ? オレたちは、だからずっと一緒だ」
真琴「あうっ……た、ただいまっ!」
そして、押さえていた物が一気に無くなったのか、ぱっと飛び込んでくる。
祐一「お帰り、真琴…」
そして、そんな一部始終を、天野が優しい目で。
ほんとうに優しい目で、見守っていた……。
と、言うわけでKanonSSの第1章は真琴後日談と、いうかエピローグの続きですね。この二人はまた、以前の騒がしい仲になって行くんでしょう。…でも……戸籍とかどうするんだろ?