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※ このSSは、KEY制作のKanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。
祐一「置いていくぞ」
名雪「あっ、待ってっ、待ってっ…」
祐一「2秒で降りてこい」
名雪「無理だよ〜」
玄関先でそういってやると、慌てて名雪が階段を駆け下りてきた。
あ、でもこの階段って、一昨日秋子さんがワックスをかけたばかりのような気が……。
ずるっ!
名雪「わっ!」
ドスン、ドスン、ドスン、ドスン、ドスン……。
予想通りというか、何というか……落ちた。
祐一「名雪にしちゃ、早いな。さ、行くぞ」
名雪「祐一…」
ぷいと、口をとがらせた様な顔で見上げてくる。
祐一「ああ、毎朝その降り方してくれたら、こっちも手間が省けるんだが…」
名雪「起こして」
だから、ボケをつっこまずに……ってのは、まあいいか。
名雪の手を持って、ぐいっと持ち上げてやる。
名雪「起きれたよ〜」
祐一「俺が手伝わなくても、起きれるだろっ!」
名雪「こういうもんだよ」
訳の分からないことを言いながら靴を履く。
秋子「あら、二人で出かけるの?」
祐一「ええ、ちょっと息抜きに」
秋子「デートですか?」
意味ありげな笑顔でさらに訊いてくる。
祐一「いえ、あの……」
と、俺が返答に困っていると。
名雪「うん、そうだよ」
いともあっさりと答えてくれる。
秋子「仲が良いわね」
さらに意味深な笑顔。
…これ以上ここにいたら、からかわれるだけだな。
祐一「じゃ、先に行って来ます」
ダッシュで玄関を抜ける。
名雪「わっ、速いよっ」
祐一「はぁ、はぁ、はぁ………」
名雪「速いよ〜」
商店街の入り口の所で息を切らしていると、名雪が追いついてきた。
こっちの方は、流石というか何というか息一つ乱れていない。
名雪「でも、デートはもっとゆっくり」
祐一「あ、ああ……」
………。
もともと言い出したのは俺の方だった。
この試験期間、半日くらいは遊び歩いても良いんじゃないか? という発想だったのだが……まあ、ことのほか名雪がやる気を見せ、こうなってしまったという訳だ。
名雪「今日は暖かいね」
祐一「そ、そうか?」
そうか? と呟いた息がそのまま凍り付くかのような空気だった。
寒いって…。
祐一「おい、どっか入ろう……このままだと、凍え死ぬ」
名雪「じゃあね…」
祐一「うおおっ! あったけぇ〜」
いかん、思わずキャラが変わって親父ぽい言葉が出てしまた。
反省、反省。
名雪「ほら、こっちだよ……」
祐一「俺、ここで待ってる」
どかっと、入り口横のベンチに腰を据え付ける。
普段、買い物は全部商店街で済ましているからあんまし、駅前のデパートには来ないけど。
…ま、たまには良いもんだな。
名雪「ほら、祐一も行くんだよ」
祐一「いや、俺はけろぴーの世話もしないといけないし」
名雪「ほらっ」
さっきとは反対に、俺が名雪に引っ張られる感じで起こされてしまった。
祐一「しかし、服なんて買わなくてもいいだろ…」
名雪「だって、冬休みだもん」
そういうもんなのか?
よく分からない。
名雪「あ、これなんてどうかな?」
祐一「おう、よく似合うぞ」
名雪「それとも、こっちかな?」
祐一「おう、よく似合うぞ」
名雪「うーん、でも、やっぱりこっちかな?」
祐一「おう、よく似合うぞ」
名雪「………」
祐一「おう、よく似合うぞ」
名雪「祐一、そればっか…」
祐一「おう、よく似合……なに?」
しまった、機械的に応えていたようだ。
祐一「わ、分かった、ちゃんと見てやるから…」
名雪「うんっ」
とことこと、売り場の中へと戻っていく。
っていうか……。
やっぱ、名雪も服とか買ったりするんだよなあ。
普通とは何かしら違う名雪だけに、そんな事が意外に感じた。
………。
……。
………。
そんな感じで、選び終わったのは、もう昼を大分過ぎた頃だった。
祐一「いい加減、腹減ったぞ」
名雪「そうだね」
買ったばかりの服が入った袋を大事そうに抱えながら、そう答えた。
で、二人して、外へ出る。
………。
祐一「寒いぞ」
名雪「うん…」
流石に、デパートの暖房に慣れた体にこの寒さは堪える…。
祐一「とにかく腹も減った……どっかで軽く食ってから帰ろう」
名雪「百花屋」
……予想通りの答えだった。
しかも、早い。
祐一「イチゴサンデーか?」
名雪「うんっ!」
嬉しそうに、ちょこちょこという感じで先に進む。
祐一「元気だな、名雪は」
名雪「だって、イチゴサンデーは好きだもん」
そして、くるっと振り返る。
名雪「祐一の次にねっ」
祐一「…ば、バカな事言うな」
名雪「酷いよ〜」
その名雪を追い越して、先に進む。
祐一「俺と食い物を並べるなって……」
と、言ってもかなり照れていた。
その顔を、名雪に見せたくなかったから先に進んだのだ。
名雪「あ、祐一っ…」
っていうか、どうしてこいつはこう恥ずかしいことを正面切って言えるんだ?
夜。
いつも通り、名雪の部屋で二人の勉強会が始まる。
……。
まあ、二人で勉強会も無いもんだが、通例になってしまっているし……ま、止める理由もないからな。
名雪「……くー…」
ぽかっ!
祐一「起きろっ!」
名雪「あ…けろぴー?」
祐一「俺は、相沢 祐一だ」
目がとろんとしてる。
まだ寝ているようだった。
名雪「あ、寝てた……」
祐一「良いから勉強を続けろ……」
名雪「うん……」
と、言うことで俺も教科書に目を戻す。
えっと、この問題は……。
……この並び方は、階差数列だな……。
………。
…うーん……解けない…。
あ、もしかして2重の階差数列か?
祐一「ってことは……」
更に、差を取ってみると………。
名雪「…くー……」
………。
名雪は、またも寝ていた。
祐一「ふぅ……」
一休みするか。
テーブルの脇に置いて置いたポットから、熱いお茶を注ぐ。
目の前には、名雪。
…ま、このお茶を飲んだら起こしてやるか。
ズスッ……。
名雪「…くー……」
ぐっすりと寝ている名雪。
これは、ちょっとやそっとじゃ起きないな。
過去の経験からそう断言する。
………。
試験勉強のしすぎだろうか?
変な事を考えている自分に気付いた。
そして、それを行動に移そうとしている。
コトン、と茶碗をテーブルの上に置くと、名雪に近づいた。
そして、耳元で…。
祐一「お前の事が好きだからな……」
小さな声で、そう囁いた。
名雪「うん、私も祐一の事が好きだよ」
祐一「のの、のおおおっ!」
バタン!
夜中にも関わらず背中からひっくり返ってしまった。
祐一「お前。寝てたんじゃ…」
名雪「祐一の声で、目が覚めたんだよ」
そう言って、本当に嬉しそうに笑った。
これだけ、目覚ましが一斉に鳴っても起きないのにあんな小さな声で覚めるって……。
気恥ずかしい俺は、そのまま無言で勉強を再開する。
名雪「ふぁいとっ、だよ」
そこに居たのは、さっきより元気な名雪。
祐一「ああ、そうだな」
もう一度、数列と睨めっこを開始しながら思った。
祐一「冬休みさ…どっか行こうか?」
そして、顔を見上げる。
名雪「うんっ」
はい、ほのぼの4連発の2弾目は名雪です。
しかし、名雪と祐一の駆け引きは微妙です。
ずれたところで、かみ合わせないといけないという難しさ………。
しかし、如何にもほのぼのという組み合わせですね
さて、次はどっちでしょう(^^;;