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※ このSSは、KEY制作のKanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。
祐一「おーい、真琴ぉ〜」
最近、真琴の姿を見ない。
いや、家を出ていったわけでも何でもない。
朝は、俺より遅く(名雪よりかは早いが)のそのそ起きるし、飯時はドタバタ騒ぎながら喰っている。
見かけないのは、昼の時分にだ。
まあ、俺も真琴も、昼は学校だが、休みのかわらずだ。
……と、いうわけで真琴おびき出し作戦に取りかかる。
飯時になるとどこからともなく現れるから、この付近に居ることは間違いないのだ。
取り出したのは、冷凍して置いた肉まん。
これを、自然解凍してから、蒸し器に入れて、ホカホカに蒸かす。
直ぐにも胃から唾液が出てきそうな臭いが漂ってきた。
これを使えば、食欲が行動に直結している真琴の事だノコノコと姿を現すに違いない。
これで、真琴の居場所を調べ上げることが出来る。
真琴「あ、貰ったぁ」
と、いうことで早速作戦を実行しよう……。
って、いう事で……って、いま真琴の声がしなかったか?
真琴「ほら、もう一個もわたしてよぅ」
………こっちの予想より遙かに早い登場だった。
祐一「お前はイヌかっ!」
と、まあ呆れながらも、蒸かしたての肉まんをぽいっと渡す。
真琴「わ、熱いッ!」
と、その熱さに慌てて手を放したところを、それを予想していた俺がパッと掴む。
祐一「あぶなく、食い物が無駄になるところだったぞ」
真琴「あぅ、ありがと」
と、落下中に拾った肉まんを真琴に返す。
今度は慎重に掴んだようだ。
祐一「お前には学習能力って物はないのか?」
真琴「なによぅ、真琴も、がくしゅうのうりょく位もってるっ!」
祐一「でも、お前昨日だって、蒸かしたての肉まんをいきなり食って舌火傷してたじゃないか」
真琴「あれは、真琴蒸かしたてって知らなかったの!」
まるで俺が悪いかのような表情で返してきた。
祐一「普通、湯気が立ってりゃ分かるだろ…」
真琴「また、祐一はそうやってゴマかすぅ!」
誤魔化したか? 俺。
等と考えていると真琴の姿が消えていた。
祐一「ん?」
と、訝っているとトントンと階段を上っていく音がした。
祐一「上か?」
それを追って二階へと上がる。
…ガチャン。
上がりきったところで、真琴の部屋のドアが閉まった。
俺に取られないように、自分の部屋で食うってことか?
浅ましいぞ、真琴。
コンコン、と2回ノックしてからドアを開ける。
祐一「真琴っ、別に取って食ったりしないから………って」
居なかった。
祐一「おかしいな、確かに部屋に入ったと思った…」
等と、何故かわざわざ声に出して考えていると、窓が僅かに開いているのが目に入った。
祐一「外か?」
ガラッと、窓を開けてベランダへ。
勿論、ベランダに真の姿はない。
祐一「どこだ…」
声「わあっ、おいしそうだね、ぴろ」
と、上の方から声が聞こえてきた。
祐一「上か?」
って、屋根しかないじゃないか……。
屋根…。
祐一「屋根の上!?」
見ると、手すりと雨樋を伝っていけば、屋根の上に出られそうだ。
祐一「よし」
それらを伝って屋根の上に出てみると果たしてそこに真琴がいた。
屋根の所でごろんと寝そべってぴろと肉まんを食っていた。
真琴「なによぅ、追いかけてきたって肉まんはあげないからね」
祐一「別に、食ったりしないって」
真琴の横にごろんと横になった。
祐一「こんな所で横になってると落ちるぞ」
真琴「だいじょうぶっ」
いい加減日向ぼっこが出来るような時期でも無いと思うが、風邪の無い所為もあってそこそこに暖かい。
祐一「いつから、ここにいたんだ?」
真琴「あぅ、肉まんもう無い…」
祐一「だから…」
真琴「ねぇ、もっと持ってきて」
がばっと起きあがるなり、そう言ってきた。
祐一「秋子さんの夕飯入らなくなるぞ」
真琴「あぅ……うん、分かった」
以前ならもっとねだるところだったが、少しは我慢ということを知ったのか、またゆっくりと横になった。
真琴「この場所、ぴろに教えて貰ったの。ね、ぴろ」
うにゃ、とそれを肯定するように鳴いたところが微笑ましかった。
祐一「そっか、じゃ俺も…」
先客の二人に並ぶように日向ぼっこに加わる。
猫は、家で一番居心地の良い場所を知っているというが、ぴろもどうやらその例外では無さそうだった。
祐一「しかし、こうしてるとほっとするなあ…」
徐々に下がってきそうな瞼を堪えながら(今寝たら、極寒の夜になるまで覚めないだろう)そう言った。
真琴「ほっとする、って?」
祐一「相変わらず、日本語が通じない奴だな」
真琴「ほらあっ、教えなさいよっ」
祐一「安心できるって事だよ」
ぶっきらぼうにそう言ってやった。
真琴「安心できる?」
祐一「ああ…」
お前と居るとな、という一言を心の中で加えておく。
真琴「あっ、あの雲肉まんみたい…」
祐一「お前、もう少し女の子らしい発想は出来ないのか?」
真琴「なによぅ」
いつも通りのやり取りをしながら、ただ青く広がる空を眺めていた。
ッてことでラストが真琴です。
静かに奏でる敷衍曲(パラフレーズ)の少し前の話です。
……ま、こんな事やるといつか落ちるな、真琴は。