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※ このSSは、KEY制作のKanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。
祐一「暑いな…」
後で知ったことだが、今日はこの地方で5月としては観測史上2番目の暑さになったらしい。
祐一「春だもんな」
そんな事を考えながら、栞の家へと向かう。
栞がまた体調を崩した。
例の病気は治ったものの、生まれつきの体の弱さが治ったわけではないようで、今回は風邪を拗らせたらしい。
そんな訳で見舞いだ。
ゆっくりとチャイムを押す。
やがて、トントントン…と規則正しい音で誰かが降りてくる音がして、それが止むとドアがゆっくりと開く。
祐一「よぅ」
出てきた香里に声をかける、
香里「相沢君ね?」
祐一「俺が、相沢祐一以外の誰に見えるって言うんだ?」
香里「北川君の変装かと思って」
…あいつならやりかねない。
香里「どうやら、本物みたいだから入って良いわよ」
そんな下らないやり取りをしながら中に入る。
祐一「で、どうなんだ具合は」
香里「あたしなら健康だけど」
祐一「誰が、香里の事を訊いたっ!」
香里「もしかしたらと、おもって」
こっちを振り向かずに答える。
祐一「んな訳があるかっ!」
香里「冗談よ」
等とやっていると、通路の一角のドアがゆっくりと開いた。
栞「あっ、祐一さんです」
嬉しそうに近寄ってくる。
香里「自称ね」
栞「えっ、偽物かも知れないんですか…?」
祐一「本物だっ!」
危なくなったら悲鳴を上げなさい、と余計なセリフを残して香里が部屋から出ていった。
栞「それで、何をしましょうか?」
ぴょんと飛び跳ねるようにして、ベッドの上に座る。
祐一「あのなあ、病人なんだから、ベッドで寝てるんだよ」
栞「つまらないですね…」
ほんとうにつまらなそうに、下を向く。
祐一「つまらなくても、病人ってのはそういうもんなんだ」
栞「そんな事言う人嫌いですよ」
…しかし、こんなやり取りをしてると、いつまでたっても寝てくれない気がした。
祐一「いいから、とりあえず横になれ」
栞「わ。病人に何をするんですかっ」
慌てたそぶりをする、
祐一「何もするかっ!」
栞「そうですよね、びっくりしました」
そんな感じでやっと、横になってくれる。
祐一「だいたい、子供に手を出すか」
栞「私、子供じゃないです…」
祐一「特に胸が」
栞「そんな事言う人、ほんとうに嫌いですよっ!」
と、流石にからかいすぎたか、ぷいっと横を向いてしまう。
祐一「悪かった、軽い冗談だ」
栞「全然、軽くないですっ」
祐一「じゃ、重い冗談だ」
栞「それでも、駄目です」
そんなやり取りをしながらも、栞はどこか楽しそうだった。
祐一「で、体調はどうなんだ?」
このままでは泥沼なんで、とりあえず、会話をずらす・
栞「そうですね……明日は学校に行けると思います」
祐一「残念、明日は日曜だ」
今日が土曜だから、早く帰って見舞いにこれたのだ。
栞「えっと、じゃあ月曜です」
以外に早く治りそうだった。
そんな感じでとりとめもない話を続けていく。
栞「あ、忘れてました。お茶を飲むんでした」
祐一「お茶?」
栞は立ち上がると、小さな魔法瓶を取り出した(どこから出したかは、怖いので考えないようにする)。
トクトクトク………と、いい音を出して湯飲みにお茶を入れていく。
…のはいいが、臭い。
栞「祐一さんも飲みます?」
祐一「いや、いい…」
栞「漢方茶なんですけど」
コクリと可愛らしい音を立てて、お茶を飲む。
祐一「なるほど、それで胸を大きくするわけだな」
栞「げほっ……ち、ちがいますっ!」
お茶を思わず、吹き出しそうになる。
祐一「汚い奴だな」
栞「誰のせいですかっ」
こんどは、落ち着いて飲む。
栞「なんでも、体質改善のお薬らしいです」
なるほど、漢方はそういうのがあるって聞いたことはあるな。
やがて、陽が落ちて、徐々に夜の帳が降りてくる。
見上げると、今にも消えかけの月が昇っていた。
栞「祐一さん…」
それまで、TVを見たり他愛ない話をしていた栞が、いつのまにか真剣な顔でこっちを見ていた。
祐一「なんだ?」
栞「えっと…」
胸に手を当てて心を静めている。
栞「……どうして、あの時、私とその運命を受け入れてくれたんですか?」
あの時………。
栞「私は、一週間、いえ、それまで持たないかもしれませんでした」
祐一「……」
栞「それなのに、どうして…」
そんなことは、分かり切っていた。
祐一「栞を一人にしたくなかったからな」
栞との距離を更に狭めて、互いの体温を感じる。
栞「でも、明日居なくなっていたかも知れない。そうすれば、とても悲しい事になるんですよ?」
祐一「悲しむことを怖がっていたら、人を好きには慣れないさ」
あれ…? 俺はなにをまじめにこんなセリフを言ってるんだ?
祐一「それに、明日居る保証がないのは、誰だって同じだろ? 誰だって、いつまで側にいれれるか分からないんだ。だからこそ、貴重な互いの存在を確認しあえる」
一呼吸置く。
祐一「ただ、栞の場合はそれが、明確だっただけだ……」
陽は完全に落ちていた。
祐一「どうだ? 今のセリフかっこいいだろ?」
栞「わ、それは私のですっ!」
日本語になってない。
栞「でも、たしかにかっこよかったですよ、ほんとに、ドラマみたいでした」
祐一「栞…」
栞「はい?」
祐一「俺は、ドラマはあまり見ないけど…栞とドラマを作っていきたいと思う」
栞「はい、私も作っていきたいです」
そして、そっと唇を重ねた…。
ってことで、第2章は栞です。ちゃんとハッピーエンドですね。いや、栞のBADENDはマジで堪えましたから。あんなの見せられた日にゃねぇ……。