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第2章

》 短い故に… 《

※ このSSは、KEY制作Kanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。




祐一「暑いな…」

後で知ったことだが、今日はこの地方で5月としては観測史上2番目の暑さになったらしい。

祐一「春だもんな」

そんな事を考えながら、栞の家へと向かう。

栞がまた体調を崩した。

例の病気は治ったものの、生まれつきの体の弱さが治ったわけではないようで、今回は風邪を拗らせたらしい。

そんな訳で見舞いだ。

ゆっくりとチャイムを押す。

やがて、トントントン…と規則正しい音で誰かが降りてくる音がして、それが止むとドアがゆっくりと開く。

祐一「よぅ」

出てきた香里に声をかける、

香里「相沢君ね?」

祐一「俺が、相沢祐一以外の誰に見えるって言うんだ?」

香里「北川君の変装かと思って」

…あいつならやりかねない。

香里「どうやら、本物みたいだから入って良いわよ」

そんな下らないやり取りをしながら中に入る。

祐一「で、どうなんだ具合は」

香里「あたしなら健康だけど」

祐一「誰が、香里の事を訊いたっ!」

香里「もしかしたらと、おもって」

こっちを振り向かずに答える。

祐一「んな訳があるかっ!」

香里「冗談よ」

等とやっていると、通路の一角のドアがゆっくりと開いた。

栞「あっ、祐一さんです」

嬉しそうに近寄ってくる。

香里「自称ね」

栞「えっ、偽物かも知れないんですか…?」

祐一「本物だっ!」


★      ☆      ★


危なくなったら悲鳴を上げなさい、と余計なセリフを残して香里が部屋から出ていった。

栞「それで、何をしましょうか?」

ぴょんと飛び跳ねるようにして、ベッドの上に座る。

祐一「あのなあ、病人なんだから、ベッドで寝てるんだよ」

栞「つまらないですね…」

ほんとうにつまらなそうに、下を向く。

祐一「つまらなくても、病人ってのはそういうもんなんだ」

栞「そんな事言う人嫌いですよ」

…しかし、こんなやり取りをしてると、いつまでたっても寝てくれない気がした。

祐一「いいから、とりあえず横になれ」

栞「わ。病人に何をするんですかっ」

慌てたそぶりをする、

祐一「何もするかっ!」

栞「そうですよね、びっくりしました」

そんな感じでやっと、横になってくれる。

祐一「だいたい、子供に手を出すか」

栞「私、子供じゃないです…」

祐一「特に胸が」

栞「そんな事言う人、ほんとうに嫌いですよっ!」

と、流石にからかいすぎたか、ぷいっと横を向いてしまう。

祐一「悪かった、軽い冗談だ」

栞「全然、軽くないですっ」

祐一「じゃ、重い冗談だ」

栞「それでも、駄目です」

そんなやり取りをしながらも、栞はどこか楽しそうだった。

祐一「で、体調はどうなんだ?」

このままでは泥沼なんで、とりあえず、会話をずらす・

栞「そうですね……明日は学校に行けると思います」

祐一「残念、明日は日曜だ」

今日が土曜だから、早く帰って見舞いにこれたのだ。

栞「えっと、じゃあ月曜です」

以外に早く治りそうだった。


★      ☆      ★


そんな感じでとりとめもない話を続けていく。

栞「あ、忘れてました。お茶を飲むんでした」

祐一「お茶?」

栞は立ち上がると、小さな魔法瓶を取り出した(どこから出したかは、怖いので考えないようにする)。

トクトクトク………と、いい音を出して湯飲みにお茶を入れていく。

…のはいいが、臭い。

栞「祐一さんも飲みます?」

祐一「いや、いい…」

栞「漢方茶なんですけど」

コクリと可愛らしい音を立てて、お茶を飲む。

祐一「なるほど、それで胸を大きくするわけだな」

栞「げほっ……ち、ちがいますっ!」

お茶を思わず、吹き出しそうになる。

祐一「汚い奴だな」

栞「誰のせいですかっ」

こんどは、落ち着いて飲む。

栞「なんでも、体質改善のお薬らしいです」

なるほど、漢方はそういうのがあるって聞いたことはあるな。


★      ☆      ★


やがて、陽が落ちて、徐々に夜の帳が降りてくる。

見上げると、今にも消えかけの月が昇っていた。

栞「祐一さん…」

それまで、TVを見たり他愛ない話をしていた栞が、いつのまにか真剣な顔でこっちを見ていた。

祐一「なんだ?」

栞「えっと…」

胸に手を当てて心を静めている。

栞「……どうして、あの時、私とその運命を受け入れてくれたんですか?」

あの時………。

「祐一さん、ひとつだけ約束してください」
「私のことを、普通の女の子として扱ってください」
「でも、1週間だけです」
「1週間後の2月1日…私は、祐一さんの前からいなくなります」
「それ以上の時間は、祐一さんにとっても、私にとっても、悲しい思い出を増やすだけですから…」

栞「私は、一週間、いえ、それまで持たないかもしれませんでした」

祐一「……」

栞「それなのに、どうして…」

そんなことは、分かり切っていた。

祐一「栞を一人にしたくなかったからな」

栞との距離を更に狭めて、互いの体温を感じる。

栞「でも、明日居なくなっていたかも知れない。そうすれば、とても悲しい事になるんですよ?」

祐一「悲しむことを怖がっていたら、人を好きには慣れないさ」

あれ…? 俺はなにをまじめにこんなセリフを言ってるんだ?

祐一「それに、明日居る保証がないのは、誰だって同じだろ? 誰だって、いつまで側にいれれるか分からないんだ。だからこそ、貴重な互いの存在を確認しあえる」

一呼吸置く。

祐一「ただ、栞の場合はそれが、明確だっただけだ……」

陽は完全に落ちていた。

祐一「どうだ? 今のセリフかっこいいだろ?」

栞「わ、それは私のですっ!」

日本語になってない。

栞「でも、たしかにかっこよかったですよ、ほんとに、ドラマみたいでした」

祐一「栞…」

栞「はい?」

祐一「俺は、ドラマはあまり見ないけど…栞とドラマを作っていきたいと思う」

栞「はい、私も作っていきたいです」

そして、そっと唇を重ねた…。


ってことで、第2章は栞です。ちゃんとハッピーエンドですね。いや、栞のBADENDはマジで堪えましたから。あんなの見せられた日にゃねぇ……。


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