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第22章

》 目の前の諧謔曲(スケルツォ) 《

※ このSSは、KEY制作Kanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。




コンコン……。

ひょっとしたらもう寝ているかもしれないので、遠慮がちにノックをする。

名雪「うにゅ?」

祐一「ぬおおおおっ!!」

いきなりドアが開いて、名雪の顔が出てきたら驚いた。

祐一「悪い、寝てたか?」

名雪「……くー…」

祐一「これから寝るところだったか?」

名雪「…くー…くー…」

…どーでもいいけど…寝息で返事をするな。

祐一「ちょっと、訊きたいことがあるんだけど」

名雪「うー………訊きたいこと?」

軽く殴ってやったお陰で、目が覚めたようだ。

祐一「名雪、編み物って出来たか?」

名雪「編み物……? 毛糸とかを編む、編み物?」

祐一「他に編み物ってあるのか?」

名雪「知らなかったよ、祐一興味があったんだね」

祐一「いや、そんな物に興味はないんだけど」

名雪「?」

分からないようなので、説明してやる。

祐一「実はな………かくかくしかじか……という訳なんだ」

名雪「…かくかくしかじかじゃ分からないよ〜」

祐一「それくらい、努力で何とかしろ」

名雪「無理だよ〜」

と、これ以上無駄に時間を使うのももったいないし、これ以上は名雪が起きていられるリミットを越えそうなので、説明しておく。

 

★      ☆      ★

 

栞の検査が終わった。

どうやら、今回も異常はなったようで、もう定期的に通院する必要も無くなったらしい。

栞「嬉しいです」

そう言って、屈託のない笑顔を見せていた。

栞「これで、長い旅行にも行けます」

まるで、俺に連れて行ってくれ、といわんげに見つめてくる。

祐一「急には無理だ」

栞「残念です。でも、あれはそろそろ貰えますよね?」

祐一「あれ…?」

なにか、欲しがっている物ってあっただろうか………。

祐一「全長10mのバニラアイスだったっけか?」

栞「大きすぎます」

そりゃ、そうだ。

栞「忘れちゃったんですか、ずっと楽しみにしていたのに……酷いです」

祐一「……うーん…」

シャベル……じゃないしな………。

栞「……本当に忘れたんですか?」

その顔が結構怒っていた。

祐一「待てッ!」

これだけ、楽しみにしているんだ、きっと大好きなものか………。

アイスでも雪だるまでも無いとすると………。

ストール…。

祐一「あっ! もしかして、手編みのストールって言うの」

栞「はい、それですっ!」

祐一「そんなこと覚えてたのか」

栞「そんなことじゃないです…大事なことです」

あれは軽い冗談の筈だったんだが………なんで覚えてるんだ。

祐一「うー……他の物じゃダメか?」

俺は編み物をするようなキャラじゃない。なんとかストールを編まないで済む方法を…。

栞「たとえば、なんですか?」

祐一「相沢 祐一愛のポエム集なんてどうだ?」

栞「わ、いいですねっ、それっ」

え!?

祐一「いや、冗談なんだけど」

栞「祐一さんからの詩集楽しみです」

祐一「………ストールを編まさせてください」

 

★      ☆      ★

 

名雪「栞ちゃんにあげるんだね」

祐一「ああ、快気祝いってことになるのかな?」

でも、少し前に回復したんだから、全快確認祝いって事になるのかもしれない。

名雪「ストール…だよね……」

ちょっとまってね、と言うとトコトコと本棚の所に向かって本を探しに行った……かと思うとすぐに戻ってきた。

名雪「これで良い?」

祐一「どれ?」

手渡された本をパラパラとめくってみる。

「冬の編み物」と題されたそれを見てみると………マフラー、手袋、帽子……と続いていって……最後の方にストールの編み方が載っていた。

それを早速読んでみる。

………。

祐一「っていうか、どう読むんだ? これは」

○だの|だのなんていう記号が埋め尽くされているだけじゃないか。

祐一「これはどう見るんだ?」

名雪「編み物したこと無いの?」

……男は普通しないと思うぞ。

祐一「名雪は出来るのか?」

名雪「うん、お母さんと一緒に編んだことあるから出来るよ」

うーん、なんていうか名雪って家庭的だよな。ってことはどうでもいい。

祐一「この記号はなんなんだ?」

名雪「丸いのはかけ目、縦の棒は表目、入るって字みたいなのが右上2目1度だよ」

………と、言われても何のことだかさっぱり分からない。

祐一「お前に任せる」

名雪「わ、ダメだよ。プレゼントは自分で作らないと」

祐一「……こんなこと言い出すんじゃなかったな」

名雪「手伝ってはあげるよ。あ、道具揃えるね」

そういうとトコトコとまた部屋の中に入っていった。

しかし……。

251目とかって書いてあるけど………何百回も、あの棒みたいなのでクイクイ編んでいくのか?

気が遠くなるような気がした。

名雪「持ってきたよ〜」

そういう名雪の手には、棒2本と毛糸と耳掻きのでかいような奴があった。

名雪「やるよ〜」

やっぱり気が遠くなるような気がした。

 

★      ☆      ★

 

栞「わ、うれしいです。私、祐一さんだけは嘘を付かないと思っていたんです」

祐一「そ、そうか………」

ということは、編まなかったらどんなことになっていたか……考えるのは止めておこう。

なんとなく、簾にも見えない柄だけど………それをいうのは止めておこう。

見た目、パッとしないこれでも、かなり名雪(名雪が寝ていた場合秋子さん)に助けて貰ってやっと完成したものだ。

もう一度、編めと言われても出きるもんじゃない。

栞「嬉しいです〜」

もう、春で使う必要もない、とおもうのだがストールを羽織ってクルクルと嬉しそうに回っている栞を見ていると、苦労したけど編んで良かったなと思える。

栞「これで、次は祐一さんの詩集ですね」

祐一「……マジか?」

栞「マジです」

笑いながらそう言った顔が、無言で俺を威圧していた。

栞「祐一さんの詩集楽しみです〜」

祐一「………」

一生、こんな感じで苦労しそうな気がしてきた……。

まあ、栞の笑顔が見れるんだから……それも良いかもな。

辛くても、その無いはずだった笑顔を見れるのだから……。

 

 

うーん。久しぶりの気がするKanonのノーマルSSです 。
っていうか、本編で気軽に言っちゃった祐一ですけど………
自爆ネタ多いですよね………。


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