SS

 

第24章

》 触れ合うことへの練習曲(エチュード) 《

※ このSSは、KEY制作Kanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。




真琴「そんなことって…祐一はそうは思わないの? 動物なんて、結局要らなくなったらポイって」

祐一「お前、そこまで懐かれていて、よくそんなこと言えるな、ってことだよ」

なんだろう、真琴のなかで何かが引っかかっていた。

なんで、こんな事を言い出したのか……まったく分からなかった。

ただ、……これと同じような事が昔あった。

それは、すごく嫌な事。

真琴「そんなことって…祐一はそうは思わないの? 動物なんて、結局要らなくなったらポイって」

祐一「そりゃそういうご時世ではあるけどさ、俺はそこまでは思わないよ」

真琴「うそだぁ」

嘘…。

祐一は嘘を言っている……。

祐一「それにこいつ、野良猫じゃないぞ 放したほうが、よっぽど危険だ」

祐一の言葉は、まるで耳に入ってこなかった。

真琴は前になにか飼っていたのかな…。

…分からない。

…分からない!

分からない!!

祐一「おまえが面倒見ればいいじゃないか。な」

真琴「………」

そう言った、祐一を見てみる。

……。

この顔…覚えている。

そして、その後の嫌な顔も覚えている…。

嫌な事。

すごく嫌な事。

嫌な事はきらい……悲しいから。

悲しい思いはしたくない…。

祐一「あ、おいッ!」

その声で、真琴の手の中からネコがいなくなっていることに気づいた。

ぽてっと、その下の道路を入っていたトラックに乗って……。

真琴「いっちゃった」

見えなくなっていた。

祐一「なにやってんだよ、おまえはぁっ!」

苦しい…。

襟元を掴まれたから。

祐一「あいつっ…ゴミ捨て場にでも捨てられたりしたらどうすんだよっ!」

真琴「あのトラックの運ちゃんが拾ってくれるわよぅ…」

祐一「そんな無責任な話があるか、ばかっ!」

無責任……。

なんだろう、それ。

ペットを飼うことになんの責任がでてくるのか。

それに、真琴はあのネコを飼ったわけじゃない。

ただ、祐一に言われて手に取っただけだ。

祐一「おまえ、あれだけのことをしておいて、どうして冷静でいれるんだよっ!」

真琴「な、なによ、あれだけのことって、大したことじゃないわよっ!」

なんで、真琴はあんな目にあって、あのネコは……。

あんな目…?

なんだっけ、それ…。

真琴「無責任も何も関係ないっ! 最初からそんな責任なんて負ってないものっ!」

祐一「このぅ…」

祐一が片腕を上げて、今にも真琴を殴る体勢に入った…。

だけど、真琴は間違っていない。

だから、正面からその祐一を睨み返してやった。

祐一「ばかぁっ!!」

耳がキーンと、鳴るほどの大声だった。

……悲しい。

なんで、祐一は真琴のことを気にしてくれないの?

なんで、あんなネコばかり。

真琴「は…ぅぐっ…」

そう思うと、涙が出てきて止まらなかった。

祐一「泣いたって、取り返しつかないんだからなっ」

慰めて欲しいのに……この悲しい気持ちを抑えて欲しいのに…。

結局、祐一にとって真琴はその程度でしかないんだ。

ただの邪魔者。

あの時も…今も。

そう考えると、祐一のそばにいることが急に馬鹿らしくなった。

どうしてこんな悲しい思いまでしてそばに居なくちゃならないの?

そんな理由なんか無い。

真琴「いいもん…もう祐一のことはわかったから…」

祐一「なにがだよ」

真琴「もぅ、祐一となんか一緒にいないっ!」

その腕を振り解いて、ちょうど立ちふさがる形だった祐一に体当たりをして……とにかく走った。

祐一「おい、真琴っ!」

そんな声は、無視した。


★      ☆      ★


真琴「何やってるんだろう、真琴…」

一度は怒りで消えた悲しさがまた戻ってきた。

とにかく、出て行こう。

あんな祐一とはいっしょに居られない。

家に戻ると、真琴の部屋にいちもくさんに入る。

真琴「漫画……」

とにかく、近くにあった布で買った漫画をいれる。

真琴「布団もないと寒いよね…」

外の寒さを思い出す。

夜になったらどれだけ寒くなるか…。

だから、布団も畳んで布に……。

真琴「入らないじゃないのよぅ」

怒ってみても入らないことには変わり無かった。

持って行けるのはどっちか一方だけみたいだった。


★      ☆      ★


真琴「何やってるんだろう、真琴…」

結局、持ってきたのは漫画の方だった。

何がしたいのか…。

祐一を困らせたかった?

祐一の漫画の本を持ち出す事で祐一を困らせてやりたかった…。

たくさん困れば良い…祐一なんて。

………。

でも、家を出たところで途方にくれる。

一体、どこへいけと言うのだろう。

行く場所なんてどこにも無い。

真琴「どこでもいいか…」

祐一が居ない所だったらどこでも一緒だ。

………。

……。

………。

気づいたらいつもよく来ていた商店街だった。

…なんでよく知っている場所に来てしまうのか。

なんだか、すごく真琴の行動が幼稚で…。

それを祐一に馬鹿にされたようで…。

腹が立った。

………。

とにかく、早くこんな所から立ち去らないといつ祐一が来るか分からない。

真琴「どこか、真琴が居て良い場所………あるのかな…」

ふらふらと歩いてみる。

どこに行くかは分からない。

こう言うのを足任せというのかもしれない。

ふらふら…。

それにしても、どこに行くんだろう…。

まるで吸い寄せられる様に、歩いていく。

真琴「はぁっ…」

その先は坂になっていた。

それでも、足はその坂の先に向かっている。

真琴「何やってるんだろう、真琴…」

坂…それも土や落ち葉がたくさんの坂。

ちょっとでも、気を抜くと転んでしまいそうな坂だった。

どうやら真琴の足はこの坂の上に行きたいらしい。

迷惑な足だった。

………。

そして、その先にあった場所。

広い、草原………。

夕焼けの赤い光に照らされて……それは赤いじゅうたんの様にみえた。

……ここは懐かしい場所。

そして、悲しい場所。

………。

でも、どうして懐かしいのか。

どうして、悲しいのか。

理由が全然、分からなかった。

……雪が降ってきたらさける屋根も無い。

おまけに寒い。

食べ物だって無い。

真琴「何やってるんだろう、真琴…」

それなのに、ここで一番明かそうと思っていた。

よく、わからないけど長い間ここに居たような気がしたから。

だからなのかな? よく分からない。

でも、祐一は絶対にここには来ない気がしていた。

………。

真琴「邪魔者かぁ…」

なんだか、自分が捨てられた様に感じて……。

それが、さっきのネコと重なって……。

さっきのネコの悲しげな顔が思い出されて…。

……気づいたら立ち上がっていた。

真琴「はぁ……」

思いなおして座る。

第一、あのネコは真琴と関係無い。

ただ、ほんの少しの間、祐一に言われて一緒にいただけだ。

それだけなのに…。

頭から、最後の顔と声が離れなかった。

そして、それが真琴の何かと重なる。

……悲しい事と。

真琴「……探しにいこ」


★      ☆      ★


真琴「何やってるんだろう、真琴…」

もう、何度言ったか分からない言葉をはきだした。

すると、そのはいた息がそのまま真っ白な形になる。

漫画のふきだしみたいで面白いけど、とても寒い。

真琴「もぅ、早く出てきてくれないと真琴1人で帰っちゃうよ?」

言ってもネコがわかる訳は無いか…。

………。

もう、探し続けてどのくらいになるんだろう?

あのこを落とした場所からトラックの走っていった方向にずっと歩いて行ってる。

ゴミ箱、草むら、軒の下……。

いそうな場所を片っ端からしらべながら…。

真琴「はぁ…もう手が冷たいよ…」

ほんとうは、もうジンジンしびれててつめたいのかどうなのか分からない。

でも、耳の方がひどくてそれは今にも切れそうなほどにジンジンとしていた。

真琴「早くでて来てよぅ…」

もう、ほとんど泣き声になっていたかも知れない。

そんなとき、ふとなにかの会話が耳に入ってきた。

男の子「お母さん、やっぱり寒いよっ!」

母「だから、マフラーしなさいって言ったでしょう。首からあったかい空気逃げていくんだから」

男の子「うん、分かったよ…」

そんな、親子が真琴の脇を通りぬけて行った。

真琴「いいね……心配してくれる人がいて」

家族……。

真琴「真琴にも、いたのかな? 家族…」

思い出そうとしてみても、全く分からない。

家族。

ずっと一緒にいられるんだよね、家族は…。

…そうだ、だったらあのネコを真琴の家族にしよう。

だったら、一緒にいられる。

そう考えるとすこしだけ元気が戻ってきた。

よし、がんばって探そう……。


★      ☆      ★


どのくらい、歩いただろう。

…よく分からない。

でも、一本道だから迷うことはないはずだ。

もう、太陽は昇っていた。

朝……。

こんなにつめたい朝を迎えたのは初めてかもしれない。

あのこもいまごろ、こんな寒い目にあってるのかな?

………。

真琴「ゴメンね…」

あの時、真琴が祐一に変な事いわなければふたりともこんな寒い目にあわなくてもよかったのにね。

そう思ったとき。

とんっ、と何かが頭の上に乗った。

………雪?

ちがう、これは柔らかいし、温かい…。

これは…。

真琴「ああっ、キミっ!」

手にとって、降ろしてみるとそれはあのときのネコだった。

真琴「ゴメンねっ…キミもいっしょに居たかったんだよね……」


★      ☆      ★


真琴「やっと、帰って来れたよぉ」

ネコ「うにゃ」

帰りは、探しながらじゃないだけ行きよりは早く帰って来れた。

それでも、もうお昼は過ぎているみたいだ。

真琴「徹夜ってやつだね…」

からだはすごく疲れていた。

真琴「少しだけ、寝ようか…」

温かい日差しに包まれて…その眠気に……。


★      ☆      ★


おなかが鳴った。

おなかがすきすぎて眠れない…。

そんな事をしった。

真琴「………」

そこで、やっと目が覚めた。

どうやら、おなかがひどく空いている様だった。

真琴「キミも空いてるの?」

ネコ「……にゃ」

やはり、元気無さそうにそう答えていた。

真琴「じゃ、買ってくるから、少し待っててね」


★      ☆      ★


肉まん。

それを買いに商店街へと戻ってきた。

店員「いらっしゃい」

いつもと同じ調子でそう話しかけてきた。

真琴「肉まん……1つ……あ、まって2つ…」

あのネコの分も買ってあげないといけないから2つ…。

………。

お財布の中身は……あ、2個買えない……。

十円だけど……足りなかった。

真琴「ね、おばちゃん。真琴1個分のお金しか出せないんだけど、2個くれない?」

店員「随分、豪快に値切るね、そりゃ無理だよ」

真琴「あぅ。やっぱりだめ?」

店員「だめ」

……仕方なかった。

1個の肉まんをあのこと半分こして食べよう。

店員「はいよ」

真琴「あぅ。はい、お金」

渡された袋は、ほわっとしていて久しぶりに感じる事の出来る温かさだった。

その温かさが嬉しくてぎゅっと抱きしめていた。

真琴「こんなに温かったんだ…」

さ、あの子のところへ戻ろう。

きっと同じようにお腹をすかしているはずだし。

そう思って、この場で食べたいのをぐっとこらえて戻る事にした.

………。

真琴「あっ…」

ゲームセンターが目に入った。

…プリント機。この寒いいまなら空いてるかも。

ちょっと駆け足でプリント機のところまで行った。

真琴「………」

そこにはいつもどおり何人かが列を作っていた。

でも、いつもよりかは少ない。

ただ、人が居なくなるのを少し離れたところで見ていた。

………。

真琴(よし、いなくなった)

それでも左右を確かめてからプリント機に向かい、最後のお金を投入する。

…これが、真琴。

1人きりの真琴…。

だから、これがその証。

ずっと居たい人と撮る機械で、一人きり写る。

でも、お金なくなっちゃったから…それもこれで最後だね。

そう思って、財布の中にしまった。

…そろそろ帰らないと、あのこがお腹すきすぎて倒れちゃうかも。

でも、急いで戻ろうとするものじゃない…。

木のねっこにあしをとられて、派手にずでん、と転んでしまった。

真琴「あぅ、いたいよ…」

痛いけど、あるけないほどじゃないし、肉まんも守った。

すっと、起き上がってあのこの待つ場所に向かう。


★      ☆      ★


真琴「やっと、着いた…」

こんな場所でも、無事にたどり着くと安堵感を覚える。

真琴「ながめいいな…」

疲れたから、座りながらその町を見下ろす。

あそこにたくさんの家族が居て…。

たくさんの友達がいて…。

そんな事を思っていると、にゃっ、と声が聞こえた。

真琴「ごめんね、冷めちゃったけど…お腹すいたでしょ?」

すこし、というかだいぶ冷めてしまった肉まんを取り出して半分をネコにわたす。

やっぱり、お腹がすいていたみたいで、黙々と食べ出した。

真琴も自分の肉まんに口をつける。

真琴「まだちょっとだけ中は温かいね…美味しい」

もう一度、町に目をやる。

そして、あたしたち。

真琴「あたしたち、一緒だね。同じ、邪魔者。どこにもいけないんだね…」

ネコは何も言って来なかった。

…当たり前か。

真琴「はぁ、寝ようか…夕べもキミを探すのタイヘンだったから寝れなかったし…」

でも、昼間と違ってもうかなり寒かった。

真琴「温かいお布団で、寝たい…ね」

………。

それでも、眠気の方が強かったみたいで、徐々にまぶたが下がってきた……。

だけど、そのとき、ふっとほっぺたに温かい息がかかった。

これは…夢?

そして、かすかに聞こえてきた声。

……それは……。


おまえは俺たちの家族なんだからな



ってことで、思いついたように書くノーマルKanonSSです(^^;;

いや、やっぱこっちの方が筆が速いかも………

あ、引用があるからか(^^;;


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