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※ このSSは、KEY制作のKanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。
名雪「ボタン、わたしが押してもいいかな?」
ボタンとは、バスを止めるときに押すやつだ。
祐一「ああ、好きにしてくれ。」
子供ならいざ知らず、べつにボタンを押したら料金が半額になるわけでもない。
そして、バスは病院前へと止まる。
そして、歩道橋を渡ると病院の中に入る。
名雪「じゃあ、行って来るよ」
とことこ、という感じで受付の方へ向かう。
病院というのは、秋子さんのお見舞いだ。
一時はICUでかなりやばい状況だったらしいのだが、その後個室に移って、いまは大部屋にまで移っている。
名雪「貰ってきたよ〜」
『見舞い』と書かれたバッジ。
どうやら、これをつけて中に入る決まりらしい。
名雪は、それを胸の所につけるが、俺はそのままポケットにしまう。
名雪「つけないとダメだよ〜」
祐一「うー、めんどいなぁ」
仕方なく、もう一度出してそれを、ズボンの所につける。
祐一「それで、何階だ?」
名雪「うん、5階だって」
秋子さんは、あちこちを打ち付けたため、いろんな病棟を回っている。
この前は、整形外科だったのだが、今回は脳外科らしい。
チン、と音がしてエレベーターから外に出る。
祐一「暗いな」
なんとなく、薄暗い感じだ。
名雪「こっちだよ」
名雪に連れられて、通路を進む。
そして、たどり着いた。
中にはいると…。
秋子「あら、来てくれたの」
まだ、頭に包帯が巻かれている物の元気そうだった。
名雪「お母さん、大丈夫?」
ベッド横の椅子に座りながら訊く。
秋子「ええ、でも仕事の方が大丈夫じゃないでしょうけど」
祐一「退院はまだなんですか?」
正直、秋子さんが居ないと食卓が寂しい。
名雪の料理もなかなかだったが。
秋子「そうですね、この検査が終われば退院だという話ですから、新学期が始まる頃には退院できそうですね」
名雪「ほんとっ!?」
名雪の顔が、パッと明るくなる。
それは、俺にしても同じだっただろう。
秋子「名雪、もう少し静かに喜んで」
名雪「あ…」
病室だということを忘れていたらしい。
その後、しばらく様子を話したりした後、見舞い時間の関係もあって病室を出て、帰ることにする。
祐一「どうするんだ? この後」
名雪「うん、良いお天気だから、服でもみていこうと思うんだよ」
…以前、名雪の服探しに付き合ったことがある。
あれこれ、何時間も迷って結局買わなかったりしてた。
祐一「俺も、ちょっと用事があるから、こっから別行動だな」
名雪「…うん、そうだね」
すこし、不満げな顔をしているところを見ると、一緒に見て貰いたかったらしい。
名雪「じゃあ、先に行くね」
祐一「ああ、じゃあまた明日な」
名雪「家、一緒…」
不満げな顔をしつつも、先に行く名雪。
俺もその後を、追うようにして……
…え!?
不意に視界に入った文字列。
何処だ? どこにこんな物が…。
ぐるっと、周りを探す。
だいたい、こんな所にあゆの名前があるはずが…。
…あった。
秋子さんの部屋とは、二つ離れた所の部屋だ。
祐一「…あいつ入院してたのか」
道理で、ここ最近会わなかったわけだ。
祐一「……食い逃げでもして、壁にでもぶつかった、なんていうのが落ちだろう」
顔だけでも見せておこうと思ってはいってみる。
祐一「………」
ベッドは6つあるが、その上に居るのは二人だ。
一人は、お婆さん。その隣にもう一人居る。
あれが、あゆだろう。
中に入り、その様子をうかがう。
…あゆは眠っていた。
お婆さん「お前さん、この子の知り合いかい…?」
その横のお婆さんが、珍しそうに声をかけてきた。
お婆さん「良かったね、あゆちゃん。ここ何年も訪ねてくる人なんて、居なかったから…」
祐一「え…!?」
何年も?
なんだ、それ!
お婆さん「7年間も、ずっと寝たきりだからね……わたしとのつきあいも長いよ」
祐一「ずっとって、7年間一度もっ!?」
お婆さん「ああ、一度も」
……理解できない。
…そうだ、人違いだ。
人違い。
思って顔をのぞき込む。
それは、俺の知ってる、月宮 あゆの顔だった。
壁には、ダッフルコートや羽付きリュックもかけられている。
お婆さん「そのコートと、リュックは私があげたんだよ」
……間違いない。
こいつは……、今目の前に居るのは俺の知っている、月宮 あゆだ。
だったら、いままで何度と無く商店街で会っていたのは誰だって言うんだ!?
祐一「この子…あゆのこと…知ってるんですか…?」
お婆さん「ええ、ちょっとした騒ぎになりましたからね。」
暇だったのか、それとも話好きなのか、語りだした。
お婆さん「もう、7年前になるのかな……」
後ろのカレンダーの西暦を確認して言った。
お婆さん「むかし、あそこ森に大きな木があった…」
大きな木が……。
お婆さん「この子と、その友達はその木に登って遊んでいて、謝って落ちてしまった」
…赤い雪。
お婆さん「幸い、友達の方はちょっとした怪我だったらしいが、あゆちゃんはこの通り」
…凍った時間。
お婆さん「どう言うわけか、親や親戚も顔を見せないし…可愛そうなものだよ…」
何かが、記憶の底から浮かんでくる。
…止まらない、出血。
…出来なかった、指切り。
お婆さん「ところで、あんたはあゆちゃんの、どういう知り合いなんだい?」
祐一「昔の……ずっと昔の…友達ですよ…」
それだけをいって、俺は病室を出た。
病院を出てからも、俺は考え続けた。
あゆが木から落下した。
それは、思い出した。
それから、7年もああしていたというのは、本当なのだろう。
あの婆さんが、俺にうそをつくとも思えない。
…もっとも、あの婆さんが呆けていたら話は別だが。
祐一「…そうだ!」
図書館。
確か、駅近くにあったはずだ。
俺は、駅行きのバスに乗って、図書館に向かう。
確か、新聞の縮小版みたいなのがあるはずだ。
俺は、地方紙の新聞の縮小版を探して、それを机の上に広げる。
7年前………1992年だ。
時期は、俺が帰る日の前日だから……。
祐一「…あった」
俺は、その記事だけをコピーすると、家へと帰った。
…一体、何だというんだ!
俺が見ていたのは、幻だったのか!?
………。
…違う。
あゆは、名雪や秋子さんとも会っている。
だったら、これは一体……
はい、名雪後日談です。元来ほのぼの系が書けない性格のため、こーゆー
展開になってしまいます。うぐぅ、暗いよぉ。