|
※ このSSは、KEY制作のKanonを元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてKEYが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)。
その日は、結局ろくに眠れずに朝を迎えた。
結局、名雪にあゆのことを訊くのは止めておいた。
…恐かったからだ。
「誰…?」
と、怪訝な顔をされることが。
名雪の部屋を素通りして、キッチンに入る。
名雪「おはよ〜」
そこには、いつも通り朝ご飯の準備をしている名雪の姿があった。
朝といっても10時過ぎだが……。
今が春休みで本当に良かったと思う。
そうじゃなければ、毎日遅刻で、生活指導の教師に目をつけられていたことだろう。
名雪「はい」
皿の上にトーストをのせられる。
そして、その上に目玉焼きを乗せて頂く。
…まだ、秋子さんには及ばないがそれでも美味い。
足りない分は、年の功か? なんて口が裂けても言えないが。
名雪も、フライパンを片づけると俺の正面に座る。
名雪「祐一はどうするの?」
今日の予定だろうか? 今後の人生の事だろうか?
祐一「そうだな…」
どうしても、あゆの事が気になる。
祐一「病院だな」
名雪「まだ、お見舞いにいける時間じゃないよ…」
祐一「その前に、差し入れを持っていかないとな」
名雪「お見舞い品…」
不満気な顔の名雪を残して、一人外に出る。
名雪「もう、暖かいね〜」
…いつのまにか付いてきていた。
時々、驚異の(いつもと比べてだが)フットワークを見せる時がある。
名雪「それで、お母さんに何を持っていくの?」
祐一「いや……秋子さんにじゃないんだ……」
名雪「そう…」
何か言いたげな顔だったが、深く考えずに探すことにする。
もう、かなり暖かくなってしまったが、まだあるだろうか?
しかし、いつもの場所にその屋台はあった。
祐一「たいやき、つぶあんとこしあん、3つずつ」
そうして、6個のたいやきを買う。
名雪「…たいやきが好きなの? その人」
祐一「ああ…」
言葉少なに病院へと向かう。
毎日のように病院へ名雪と通っていたが、今日ほど緊張したことはない。
あゆの存在が名雪の一言で決まってしまう。
そんな気がしたからだ。
そんなことを考えながら、5階へ向かう。
まだ、面会時間ではないが特に注意を受けることも無く、病室の前に立った。
そう書かれたプレート。
名雪の顔のほうを見る。
祐一「知ってるか?」
一瞬。
名雪「知ってるか…じゃないよ。あゆちゃん、入院してたの?!」
不機嫌そうな顔で、俺に言った。
俺は、とりあえず胸を撫で下ろす事が出来た。
祐一「ああ、7年前からずっとな……」
名雪「7年前って…」
先に中に入る。
昨日はいた、婆さんは今日は居なかった。
しかし、あゆは居た。
ぽつんと一人で。
無機質な壁に囲まれて…。
祐一「あゆ、今日はたいやき買ってきてやったぞ。一緒に食おうぜ」
ベッドの上に座ると4つをあゆの枕のところに置き、2つを俺が持つ。
祐一「名雪は、つぶあんとこしあんどっちだ?」
と、訊こうとして止めた。
祐一「どっちが、どっちだかわからん。こっちでいいな」
一方を強引に渡すとそのままたいやきを頭からかぶりつく。
祐一「やっぱ、焼き立てが一番だな」
何も答えないあゆにそう言った。
名雪「祐一、説明して」
たいやきも食べずに言ってくる。
祐一「説明できる奴が居るくらいなら、俺が聞きたいくらいだ」
名雪「………」
祐一「俺の初恋の相手が、このあゆだったんだ」
名雪「え…」
祐一「覚えてるだろ、7年前。俺がおまえを含むこの街を拒絶した時…」
名雪「うん…」
静かに肯く。
祐一「その時の、原因がこれだ。あゆが木から落ちて、それで死んだと思って…それで思い出ごとこの街を封印した…」
名雪「……思い出したよ」
何を思い出したのか?
その時の事件の事なのだろうか?
名雪「じゃあ、私たちにあっていた、あゆちゃんは…」
秋子「多分、祐一さんに逢いたかったのよ」
名雪「お母さん…」
祐一「秋子さん…」
いつから居たのだろうか?
達の背後には秋子さんが立っていた。
秋子「約束していたんでしょ?また逢うって。だからよ」
知っていたのだ、秋子さんは。
秋子「でも、駄目よ。面会時間以外に来たら」
そう言うと、何事も無かったかのように戻っていった。
面会時間はとうにすぎて、夕闇が目前まで迫っていた。
でも、俺はあゆの側から離れることが出来なかった。
そして、名雪も側に居続けてくれた。
ありがたかった。
………。
……。
………。
…ゆっくりと。
それでも、ゆっくりと時間は進んでいった。
名雪「祐一…」
祐一「なんだ?」
名雪「ううん、なんでもない」
………。
……。
………。
名雪「祐一…」
祐一「なんだ?」
名雪「わたしね、祐一があゆちゃんの事好きなの知ってたよ」
祐一「…え?」
突然、何を言い出すんだ? こいつは…。
名雪「わたしが言ってもしょうがなかったから、いままで言わなかったけど」
そう言って、あゆの髪の毛を撫でてやった。
名雪「祐一、言ってくれたよね。わたしの側にずっと居てくれるって」
…あの目覚ましに…。
祐一「ああ、覚えてる…」
名雪「だから、わたしも祐一の側だよ」
まっすぐな目で俺を見る。
名雪「良かったこと、悪かったこと、綺麗なもの、汚いもの………いろんなこと、全部祐一と一緒に見ていくよ」
名雪は、こんなにもしっかりした奴だったんだ。
祐一「ああ、そうだな。一緒だな」
名雪「うん」
これから、まだまだ色んな事がある。
でも、俺と名雪が一緒なら……。
ただ、今は全ての事実をしっかりと焼き付けて…。
はい、無事前後編で完結です
思ったよりかは、暗い展開にはならずに済みましたね。
でも、あゆ病の方にはきつい展開でしょうか?
次は、美汐シナリオSSかな?