ONE SS第1章
〜哀しき事実へ〜

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




帰り道…

(ん…?)

帰り道を見ている気がするよ。

(そう…?)

うん。遠く出かけたんだ、その日は。

(うん)

日も暮れて、空を見上げると、それは違う空なんだ。いつもとは。
違う方向に進む人生に続いているんだ、その空は。
その日、遠出してしまったために、帰りたい場所には帰れなくなってしまう。

………。

……。

………。

七瀬「なに、おおげさに言ってるのよっ!」

浸ってるオレだが、七瀬の遠吠えで現実に戻されてしまう。

浩平「いや、帰れなくなるかと思ったのは事実だ」

七瀬「それって、ただ単にたいやき屋を探していただけでしょ!」

浩平「そう、あの日、オレと茜は安くて旨くて、しっぽまで餡の『幻のたいやき屋』を求める旅に出ていたのだ」

茜 「…旅には出ていません」

浩平「しかし、ダンジョンの主のせいで俺達は見も知らぬ公園に転送されてしまったのだ」

茜 「…違います」

相変わらず、茜が冷静な突っ込みを入れる。冗談の通じないやつだ。

浩平「でも、茜も食べたいだろ? たいやき」

茜 「食べたいです」


★      ☆      ★


浩平「……と、言うわけで出動だ!」

長森「はい?」

椎名「ほえ?」

みさき「なんなの?」

澪「…………」
???

七瀬「はあっ……」

茜「がんばりましょう」

見事なまでにまとまりがないメンバーだ。

詩子「つまり、全員でその『幻のたいやき屋』を探そうって事よね?」

浩平「そうそう、名付けて『みんなで幻のたいやき屋を探そうプロジェクト』だ……って、何故お前が居るっ!?」

詩子「最初から居たけど?」

浩平「そうじゃなくて! お前は、どうしてそうどこでも現れるんだ? おまえゴキブリの突然変異だろ?実は」

茜「…時間、無いです」

浩平「っと、そうだった。こんな、脇役に時間をとられているわけには行かない。さっそく探そう。まずは椎名だ」

椎名「ほえ?」

こいつが、『幻のたいやき屋』を知ってる確立はもちろん限りなく0に近い。しかし…。

椎名「…ハンバーガー」

こいつには、動物的勘と嗅覚がある。これを上手く使えば、何とかなりそうな気がする。

浩平「椎名、たいやき好きか?」

椎名「うん」

浩平「よし! 探してこいっ!」

椎名「うん」

とことことこ…………。

長森「繭ちゃん、一人で平気なの?」

浩平「安心しろ、七瀬も連れていった」

七瀬「って、ぎゃーーーっ!!」

どこか遠くで、七瀬の悲鳴が聞こえた気がするが気にしないことにする。

浩平「次は長森だ」

長森「わ、わたしっ!?」

実は、一番の本命だ。こいつなら、むかしオレと『幻のたいやき屋』に行ったことがあるかもしれない。

浩平「で、しってるか? 『幻のたいやき屋』?」

長森「うーん。分からないけど、探してみるよ」

とてとてとてとて…………。

浩平「次に茜だ」

茜「…はい」

こいつは、甘い物となると執念が凄い。

浩平「その執念は、長森が猫を見つけた時、みさき先輩が学食のカツカレーを見つけた時、住井がヒロインの制服を見つけた時、七瀬がストリートファイトの相手を見つけた時に匹敵する」

七瀬「誰がよっ!!」

ん? いま、居るはずの無い七瀬の声が聞こえたような気がする。……まあ、気の所為か。

浩平「と、言うわけで探して来てくれ」

茜「がんばります」

とことことこ………。

浩平「次は澪だ」

澪「………」
うん、うん。

こいつは、スケッチブックを持っている。これに、たいやきの絵でも描いて歩いていれば簡単に見つかるだろう。

浩平「よし、澪。オレがたいやきの絵を描くから、それを持って聞き込みをするんだ!」

澪「………」
うん。

かきかきかき………。

……と、描けた。我ながらピカソもはだしで逃げ出すような抽象画だ。

澪『いってくるの』

って、抽象画じゃ駄目じゃん!!………もう、行ってしまったが。まあ、何とかなるだろう。

浩平「さて、次はわれらの七瀬だ」

みさき「七瀬さん、そんなに探し物上手いの?」

浩平「ああ、あいつなら……」


大通りに出た、通行人が沢山居る。

七瀬「おらあああああぁっ!!! そこの通行人!!」

通行人「ひいいっ!! な、な、なっ、なんですかっ?」

七瀬「あんたぁ、たいやき屋しらない?!」

通行人「し、し、知りません!」

七瀬「嘘を付くと、ためにならないわよ」

通行人「う、嘘なんかじゃ…」

ばきっ、べきっ、ぼこっ、ぐしゃっ!

沈黙。

七瀬「どうやら、本当に知らなかったようね。それならそうと早く言えばいいのに…………って、そこの人!!!」


浩平「と、まあ。こんな具合だ。当人曰く、これが乙女の成せる技らしい」

みさき「凄いね」

七瀬「誰が、んなことするかああぁっ!!!!!!」

ぼごおおおおおおおおっ!!!

突然、後頭部に強烈な衝撃を感じてオレは、ぶっ倒れた。

立てない。

みさき「浩平君? 大丈夫?」

浩平「せ、先輩。いま、七瀬のやつ出てこなかったか?」

みさき「ううん、出てこなかったと、思うよ」

ひょっとしたら、ドッペル七瀬なのかもしれない。

浩平「ま、いいか。次にみさき先輩だ」

みさき「やっと、出番だよ〜」

なんといっても、みさき先輩はあの、四次元胃袋をもっている。食べ物の事となれば喜んで協力してくれるはずだ。

みさき「いま、変なこと考えてない?」

相変わらず鋭い。

浩平「いや、おれは別に先輩が四次元胃袋を持ってるなんて考えてないぞ」

みさき「浩平君、ひどいよ〜」

とはいえ、先輩に町に出て探索させるのは不可能だ。

しかし、先輩は学校内なら自由に動けるし、友人も多いだろう。その中には『幻のたいやき屋』を知ってるやつが居るかもしれない。

浩平「と言うわけで、みさき先輩は内部の聞き込みを頼む!」

みさき「うん。依頼料は安くしておくよ」

浩平「依頼料取るのか!」

みさき「冗談だよ」

とととととと………。


★      ☆      ★


ふうっ………。

大きく息をついた。個性が強い連中だけに、一度に集まると操るのも一苦労だ。

詩子「なんだか大変そうだけど、大丈夫?」

……忘れてた、こいつを。

詩子「でも、楽しくていいよね」

浩平「お前を呼んだ覚えはない」

詩子「呼ばれてないよ。たぶん。」

浩平「たぶんじゃ無い、絶対に呼んでない!」

詩子「でも、遅いんじゃ無い? みんな」

あからさまに、話題を逸らしやがる。

浩平「そうだな、もう報告に戻っていないとおかしい時間なんだが……仕方ない。探しに出るか」

詩子「私も行くね」

浩平「頼むから来ないでくれ」

不思議なことに、詩子は本当に付いてこなかった。へんなキノコでも食ったのかもしれない。


★      ☆      ★


まずは、椎名をさがすか。あいつを放って置くとどんな目に会うか、分からない。

浩平「まあ、どんな恐いやつに絡まれていようと七瀬が居れば恐くないだろうが」

七瀬「どういう意味よっ!!」

出て来た。相変わらず便利な奴だ。

浩平「ドッペル七瀬、椎名はどうした?」

七瀬「本物よっ。わたしはっ!」

浩平「まあ、そういう事にしておいてやろう。で、椎名は?」

七瀬「え? さっきまで、みゅーみゅー言ってたけど………」

……いやな予感がした。そして、その予感は的中した。

椎名「みゅーっ♪」

遠くから、椎名の声が聞こえた。BOSバーガーの中からだ。

浩平「あいつ、金持ってないぞ」


こうして、七瀬と椎名の回収には成功した。しかし、『幻のたいやき屋』の発見は出来なかったようだ。

浩平「脅し方が足りなかったんじゃ無いのか?」

七瀬「何の話よっ!」

さて、次は長森だが………。

居た。

SSだけにやたら簡単に人が見つかる。しかし、あいつあんな路地裏で何やってるんだ?

浩平「長森〜っ!」

長森「あ、浩平!! みつけたよーっ!」

浩平「お、さすが本命! どこだ!」

長森「ここだよ。ここだよ」

そういって路地裏を指す。なるほど、そんな所に隠してあったのか、それならオレが見つけられなかったのも納得が行く。

長森「ほら、この猫。可愛いでしょ!」

ずしゃーーーーーーーっ!!

ある程度、予測して居たとは言え、こうぼけられると体を張ったリアクションもしたくなる。

浩平「オレは、猫の探索を命じたか? 長森隊員?」

長森「隊員じゃ無いもん! それに、可愛かったんだもん!」

こいつの事だ、ここで猫を見てからずっと居たんだろう。

浩平「もういい。次に行く! つぎは茜だ!」


ザーーーーーーーーーッ!!

と、突然雨が降り出したぞ?? って、空は晴れてるじゃ無いか?!

長森「わっ! 不思議だねえ。雨が降ってるよっ!」

ま、何となく展開はよめたがな。このSSの作者は展開が単純すぎるんだ。

案の定。ピンクの傘を差した茜が見えた(いつも、持ってるのか?)。

浩平「……ここで何をしているんだ?」

茜からの答えは期待していなかった。

茜「…待っているんです」

浩平「待ってる?」

茜「…はい」

浩平「待ってるって、誰を?」

茜 「私のたいやき」

………。

5秒間ほど時間が停止したような気がした。

茜 「…冗談です」

浩平「真顔で言うのは止めてくれ。一気にクリスマスイベントに突入したのかと思ったぞ」

気づいたら雨も止んでいた。最近の天気は随分と便利に出来ているようだ。

茜「一生懸命さがしたんですけど。みつかりませんでした」

浩平「そうか、次は澪を探すか」

長森「どうやって探すの?」

浩平「簡単だ、この釣竿に、おれの制服を餌として仕掛ける。で、これを投げる!」

この場合、釣竿をどこから出したのか突っ込んではいけない決まりになっている。

茜「…これで、上月さんが出てくるんですか?」

浩平「いや、多分出てこない」

茜「………」

七瀬「………」

椎名「みゅ?」

長森「はあっ…」

と、その時。

がしいっ!!!

浩平「かかったぁ!!」

長森「嘘だよ、嘘だよ」

ぎりぎりぎりとリールを巻くと、確かにそこには澪がいた。

澪『ひりひりするの』

浩平「そりゃ、50メートル近く引きずられたらな」

澪『酷いの』

浩平「まあ、その事は置いておいてだな、『幻のたいやき屋』はみつかったのか?」

澪『あのね』

澪『みんな、変な顔するの』

浩平「そうか?」

長森「浩平、どんな絵をかいたんだよ」

………。

茜「…なんですか? これ。」

浩平「たいやきの抽象画だ。見事だろう」

長森「これじゃ、わからないよっ!」

浩平「くそっ、澪も失敗か!」

長森「これって、浩平の失敗だよっ!」

澪「………」
はう〜っ。

かなり、疲れているようだ。

浩平「最後の頼みの綱は、みさき先輩だな。なんとか、聞き出してくれているといいんだが」

オレ達は学校へと戻った。

長森「みさき先輩どこにいるのかな?」

浩平「屋上だろう?」

カチャカチャカチャカチャ……。

どこか遠くから、金属音が聞こえる。

茜「浩平。急ぎます」

浩平「まて、みさき先輩の居場所が分かった」

学食へ向かう。

カチャカチャカチャカチャカチャ……。

音が大きくなった。やはり、この中だ。学食の中へ入った。

長森「………」

茜 「………」

七瀬「………」

椎名「ほえ?」

澪 「………」
 ぼーっ。

浩平「諸君。これが自然の神秘だ」

学食では、先輩がカレーをくっていた。

隣には大鍋がいくつか横になっていたが、数を数えるのは恐いので止めておいた。

みさき「あれ? みんな来たんだ? みんなも食べる?」

浩平「そうじゃなくて、なんでみさき先輩が、カレー食べてるんだよ!」

みさき「うん、食堂の叔母さんにあったら、『カレーが余ったから、ただでいいから食べていかないか?』って言われただよ」

そっか、ある意味この学校の関係者はみさき先輩とはかなり前からの知り合いでもあるしな。

浩平「で、『幻のたいやき屋』の情報は分かったのか?」

みさき「忘れてたよ〜」

浩平「…そうだと、思った」

結局、あれだけの大捜索を繰り広げながら手がかりすらつかめなかった。

茜「たいやき…」

浩平「悪い、また今度だ」

長森「ねえ、浩平。そのたいやき屋さんって?」

浩平「覚えてないかな? 昔行ったことあっただろ?」

長森「ひょっとして、商店街をちょっと曲がった先にあったたいやき屋さん?」

浩平「ぬお、さすがはだよもん星人! 覚えていたんじゃ無いか! よーし、行くぞぉ!」

長森「はあっ……。浩平覚えてないの?」

浩平「何がだ?」

長森「はあっ……。あのたいやき屋さん移転したんだよっ。半年前に」

浩平「そ、そういえば、そんな話聞いたような気も…」

茜「たいやき…」

七瀬「あんたっ、こんな下らないことで、乙女を引っ張りまわしたわけ?」

周囲の気温が3度ほど下がった気がする。七瀬は確実に怒っているし。たぶん、茜も……。

茜「怒っています」

七瀬「オリハラ コウヘイ!!!」

つ、遂に七瀬の中に眠っていた鬼が目を覚ました…………って俺も語っている場合じゃ無いな! 逃げるべし!!

みさき「なんだか、楽しそうだね」

椎名「みゅーっ!」

長森「これが、哀しき事実?」

茜「…はい」


 このSSの評価をお願いします。送信後、一覧に戻ります。



SSトップへ

YPFトップへ