ONE SS第19章
〜ティア・ドロップ〜

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




 私は、そこに佇んでいた。
誰もいない場所に、ぽつんと佇んでいた。
何をしていたのか? ………分からない。
ついさっきまで、何かをしていた。
何かを待っていた気もするしそうでない気もする。
気味が悪かった。
何かが、胸につかえている。
白昼夢というやつなのだろうか?
しかし、私は、結局何を出来るわけでもなく、首を振りつつもそのまま帰宅した。


 何か、あった気がする。でも、思い出せない。ちょうと長い夢を見ていたが朝起きたとたんに全てをわすれた。そんな感じだった。
そして、悲しかった。
なんで、悲しいのか………まったく分からなかった。
ただ、悲しいという感情だけが私の中に残り続けているようだった。
でも、そんなに悲しいことを忘れてしまうわけもない。
それが、もし本当に大変な事だったら明日にでも思い出すはずだ。


 でも、一向に思いだしはしなかった。
そして、部屋においてあった物。
私は、それを買った覚えも貰った覚えもない。
それが、突然部屋に置いてあったのだ。親からのプレゼントだろうか?
しかし、私の親はそんな気の利いたことをする親ではない。
それに、プレゼントを貰うようなこともなかった。
もしかして、盗癖でもあるんじゃないか?
そんな考えも巡った。
無意識のうちに、何かを盗んでしまう人の話を聞いたことがあった。
もしかして、私もそうなんじゃないか?
でも、知らない物が増えることはなかった。
こうなると、純粋に気味が悪い。
何度か、捨ててしまおうと思ったがどうしてもそのことに気が引け、結局押入の奥に締まっておくことにした。


 


 それから、少しの時が流れた。
でも、あの悲しいという感情は消えなかった。
どうして悲しいのか、全く分からないまま。
悲しみの原因が分かっていれば、それを解決のしようもある。
嫌な思い出なら忘れればいいし、辛い出来事なら排除なり逃避なり方法はいくらでもある。


 でも、私のはただ悲しいという感情だけなのだ。
原因がないから排除も逃避もできない。それに、すでに忘れていることを忘れることが出来るはずもない。
つまり、その感情は私の中に残り続けた。
こんな、感情なんで要らないのに。


 


 それから、かなりの月日が経った。
あれから、私は学校を卒業し、働き、恋に落ちて、結婚し、子供もできた。
それは幸せな日々だった。
特別なことがある訳ではないが、日常の一つ一つが私の幸せだった。
ご飯を作って、美味しいって言ってくれて、一緒にTVをみて、たまに旅行をして。
でも、悲しみの感情だけは残り続けていた。
きっと、ずっとつきまとうね。
だったら、私もつきあっていこう。
この、悲しみの原因。それを探そうと思った。
もちろん、それを知ったことでもっと悲しい思いをするかも知れない。
でも、私は知りたかった。
知らないことの方が幸せだという処世術を私は好きではない。
幸せそうに寝ている娘の髪の毛を撫でながら、そう思った。


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