ONE SS第21章
〜乙女と阿呆男−後編〜

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




七瀬「って事になってるけど……」

浩平「住井の奴、かってに人の机の上に花を添えるんじゃないっ!」

復帰したら、友情のジャイアントスイングで窓から飛ばしてやる。

七瀬「でも、良かった。軽傷で」

軽傷とはいえ、ここは紛れもなく病院のベッドだ。

一応腹は刺されたらしいが、それほど深くもなく1週間程度で退院できるらしい。

ちなみに、寝てしまったのは連日の睡眠不足とその前に体育でマラソンをやらされた所為だ。

七瀬「あ、リンゴむくから」

七瀬がリンゴと包丁を取り出して皮をむこうとする。

浩平「ばかっ、お前に皮がむけるかっ」

七瀬「むけるっ! 乙女なんだからっ!」

ま、そう言うと思った。

と、まあ意気込みはいいが、むき始めようとするとぼろが出る(とっくに出てるが)。

七瀬「くっ…うぐっ…」

包丁の角度が大きすぎて皮をうまくむけていない。ちょっとむけては千切れて、向けて千切れての繰り返しで一向にはかどらない。

浩平「オレが……」

七瀬「あたしがやるのっ!」

はなしかけないでっ! という感じで言われてしまう。

………。

……。

………。

七瀬「むけたっ!」

七瀬が諸手をあげる。

浩平「七瀬………良くやってくれた」

七瀬「うん」

浩平「これのどこを食えって?」

既に芯しか残っていない。

七瀬「すこし、厚くむきすぎた?」

浩平「少しじゃないっ!」

七瀬「はうっ…」

うなだれる七瀬。

七瀬「もう一個挑戦するっ!」

おお、再戦を誓うボクサーのような目だ、と言おうとしたが殺されかねないので止めておくことにした。

………。

……。

………。

……。

………。

七瀬「出来たっ!」

頭上にリンゴを掲げる。

確かに形こそ歪だが、今度は食える部分がありそうだ。

ちなみに、周りに失敗作がたくさん転がっている気がするが七瀬の努力に免じて気にしないことにする。

浩平「しかし、お前なら素手でリンゴを握りつぶして、ほらっ、喰いなさいっ! とかやるとおもったんだがな」

七瀬「するかっ! ………!」

叫んだ一瞬後で、ここが病室だと気づいたらしい。

浩平「相変わらず不器用だな」

でも、その努力はオレに向けられているんだよな。

そう思うと七瀬が愛しかった。

七瀬「でも、もうあんな無茶しないでよね」

無茶、七瀬をかばったことか?

七瀬「本当に、心配したんだからっ!」

涙ぐむ七瀬。

そうだな。

もっと、しっかりとしてやらなくちゃ行けないんだよな。

七瀬と一緒の学校生活。

そんなものを失ってしまったのだ。きっと、凄いあこがれがあったに違いない。

とてつもなく、不器用なシンデレラと王子だけどそれはそれで良い。

それは二人だけの物語。

その物語に不器用かなんて関係ない。

二人で作っていく物語。

そうして、生きているんだ。

浩平「なあ、七瀬」

七瀬「ん? なに?」

ベッドの少し横にある流し場で皿を洗っていた七瀬が振り返り、こっちへとやってくる。

浩平「目の上に、リンゴの皮がついてる」

七瀬「わっ、とってっ!」

七瀬の顔が近づいてきたとき、オレはそっとキスとした。

七瀬「わっ、こんな所でっ!」

このまま、端から見ればおかしいけど幸せな二人でいれたらいい。

そう思った。


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