第25章

》 幸せの見つけ方 《

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)PS版とは内容が違うことが大いにあります。はい。




 

深山『折原君?』

急にかかってきた電話の相手は俺の予想範囲外の物だった。

浩平「深山さんか?」

深山『ええ』

浩平「それで? こんな時間に書けてきたんだ何か用があるんだろ?」

深山『ちょっと明日あえないかしら?』

明日は土曜日。

受験も終わり、のんびりした時間を送っている。まあ、みさき先輩と会う約束はあるがそんなに時間はかからないだろう。

浩平「ま、時間がかからないなら」

 

★      ☆      ★

 

浩平「よう、深山さん。久しぶり」

待ち合わせの公園に先に着いていた深山さんにフレンドリーな挨拶をする、

深山「先週、みさきと一緒にあったと思うけど?」

浩平「なかなかに鋭いな。」

深山「そんなことより本題に入って良いかしら?」

話にのってくれないのは悔しいが、とりあえず真剣そうな顔なので訊いておく。

浩平「みさきの話だろ?」

深山「ええ」

すでに澪とはずいぶん会ってないし、まじめな話と言ったらそれしか考えられなかった。

深山「ドーベルアイって知ってるかしら?」

浩平「ドーベルアイ?」

ドーベルマンの犬にアイとかいう、似合わない名前を付けて飼っている人がイメージとして浮かんだが、たぶん違うだろう。

浩平「アイって名前のドーベルマンの事か?」

って、なんで違うと思っておきながら言ってるんだオレはっ!

深山「言うと思ったわ…」

しかも、読まれてる…。

深山「脳に電極を埋め込んで人工視力を与えようって装置の事ね」

浩平「ああ……」

ちょうどその開発がされたときは、消えてたもんで知らないが、その後もなんどか報道されてから知ってはいる。

たしか、年末に商品化したとかなんとかって話は聞いた。

浩平「それで?」

深山「みさきの主治医が勧めてるらしいのよ」

浩平「……あの装置を?」

深山「みさきは若いし、視力を失ってから間もないから見える可能性が高いらしいのよ」

考えてみる。

たしかに見てくれは悪いだろう。

まあ、TVに出ていたような電線向きだしみたいな感じではないだろうが。

それでも、物が認識できるのは大きいはずだ。

一度でも、真の闇を経験していたらその怖さは十分すぎるほど分かる。

それを解放できる可能性がある。

先生や両親は、いつか医学が進歩したらきっと目が見えるようになるから、

だからそれまでがんばろうって言ってくれたよ

でもね、私は自分の目が二度と光を取り戻すことがないって、知ってたんだ

先生やお父さんやお母さんが嘘ついてるって知ってたんだ

だからね、その時は死のうって思った

いつかのみさきの言葉が思い出される。

浩平「医学の進歩ってのはすごいな………」

あのときの医者は本当に気休めで言ったに過ぎないはずだ。

それが実際になるとは。

これが小説に書かれていたことだったら、一笑したに違いない。

事実は小説より奇なりなんて、案外当たってるのかもな。

浩平「それで、話ってのは?」

深山「それだけだけど」

極めてシンプルだった。

しかし、それは……。

浩平「分かった。オレはこの後みさきと逢う約束があるから」

深山「わかったわ…」

浩平「じゃあな」

くるっと背を向けて公園を出ようとする。

深山「折原君…」

浩平「なんだ?」

振り返らずに声だけを返す。

深山「しっかり、みさきを支えてね」

浩平「分かってる」

今までは深山さんがみさきを支えてきた。

小学、中学、高校……。

その間、みさきが1人で、ひとりぼっちで闘っていたとしたら、これほどのポジティブさを持っていただろうか?

そこには、常に深山さんの存在があった。

それをオレはバトンタッチされたのだ。

 

★      ☆      ★

 

みさき「おはよう、浩平」

浩平「よう、みさき」

恒例となった、みさきの家の前での待ち合わせ。

敬称を付けない呼び捨てにもお互いだいぶ慣れてきた。

みさき「それで、受験どうだったの?」

浩平「当たって砕けてきた」

みさき「砕けちゃダメだよ〜」

それは全くその通り。

浩平「まあ、何とかなると思う」

みさき「うん、良かったね」

満面の笑顔。

これだけで、今までの努力が良かったと思える。

みさき「今日は、どこに連れて行ってくれるの?」

浩平「ああ、すぐ近くだ」

そういって、みさき連れ出した。

………。

浩平「着いたぞ」

みさき「着いたね〜って、早すぎるよ〜」

まあ、目の前の学校だからな。時間にして1分もかかってない。

浩平「屋上」

ここならみさきの手をひくまでもない。

先導するかのように、屋上へと向かっていった。

 

★      ☆      ★

 

みさき「懐かしい風だね〜」

浩平「そうか?」

みさき「うん」

浩平「それでな、みさきの目のことなんだけど」

みさき「ああ。雪ちゃんから聞いたんだね」

浩平「ああ」

みさきに表情の変化はなかった。

浩平「それでどうするんだ?」

みさき「断るよ」

悩みの入り込む余地のない、さらっとした答えだった。

浩平「どうして? みさきは視力が戻ることを望んでいたんじゃ…」

確かに、あれで与えれるのは仮初めの視力かもしれない。

もしかしたら……。

みさき「あ、怖がっているわけじゃないよ」

こっちが考えていたことを先に言われてしまった。

みさき「いままでで、たっぷり鍛えられたからね。ちょっとやそっとじゃへこたれないよ」

オレの目に映っているのも、何かに怖がっているみさきではなく、しっかりとした意識を持った強いみさきだった。

浩平「だったら、どうして?」

言っておきながら、いくつか思いついた。

過去にそれで、視力を与えられた人への報道。

モルモットとしてのような扱い。

どれも、みさきが嫌がるのに十分すぎるものだった。

みさき「私ね、視力を失って感謝してるんだよ」

しかし、みさきから返ってきた答えはそんなオレの陳腐な考えを越えた物だった。

浩平「感謝…?」

みさき「うん。感謝。いっぱいね」

そういって、何も映さない瞳で、抜けるような青空を見上げていた。

みさき「雪ちゃんと仲良くなれて、いろんな人に支えてもらって……そして、浩平と出逢って……」

浩平「それは別に…」

目が見えない事で得られた物じゃないはずだ。

オレだって、それだけの理由でみさきの側にいるわけじゃない。

みさき「うん、浩平の言いたいことは分かるよ。でも、そう思えるんだよ」

一呼吸置いて、話を続ける。

みさき「うんとね、何か得ようとすると、何かを失ってしまうんだよ。どこかでね」

そういって、みさきは笑った。

みさき「私は、今の世界が好きなんだよ」

それは、失う事への怖さではなかった。

ただ、単純に好きなだけなのだ。

みさきは、何が幸せなのか…何をすることが幸せに繋がるのか知って居るんだ…。

一緒に、春の暖かみを感じること…。

浅瀬で、水を掛け合いながらはしゃぐこと…。

落ち葉を集めて焼き芋を焼くこと…。

一緒に手がかじかむまで雪合戦をすること…。

全てが幸せ。

浩平「ん、分かった。」

みさき「これからも、浩平にはお世話になります」

ぺこりと頭を下げたみさき。

浩平「おう、任しとけ」

これも、幸せ……明日もきっと…。

 

★      ☆      ★

 

浩平「不合格だったぁ!?」

幸せじゃ無かったりする。

 

ONESSは正月についでみさき先輩です。

まあ、ネタはあれですね、ニューヨークのドーベル研究所が作ったやつです

ほんとに驚きましたよ、あれは

10年後なんてどうなってるか、想像も出来ないですね。


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