ONE SS第6章
〜ONE−Previous item〜

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




11/18 午前3時。


浩平「ながもりー、寝るなよぉお」

長森「ねてないよっ、寝そうなのは浩平だよっ」

たしかに。別に夜更かし苦手なわけではないのだが、こう何にも起こらないと、眠くもなると言うものだ。

長森「今日は、33年に一度のすごい流れ星が見られるから、見ようっていったの、浩平じゃないっ」

しかし、流れ星は、ぽつ、ぽつと降っているくらいだ。

浩平「うーっ、ちっとも雨みたいに降らないじゃないかっ。気象庁の嘘つきっ!」

長森「気象庁は関係ないよっ!」

浩平「じゃあ、科学技術庁だ!」

長森「そっちも関係ないよっ!」

浩平「俺たちの血税をなんだと思ってるんだ!」

長森「意味不明だよっ!」

そんな風に、いつもどおりのやりとりを続けながら、ぽーっと、空を眺める。たまには、こんな時間も良いものだ。

浩平「しかし、寒いな」

長森「あ、私、お茶入れてくるよ」

ぱたぱたと、キッチンへ降りていく。熱いお茶でも持ってきてくれるんだろう。

…ぽつ ぽつ

不規則な…それでいて、一定の間隔を置いて、流れ星が降ってくる。

…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ

しばらくまえから、ずーっとこんな感じだ。これでは、眠くもなると言うものだ。

…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ

しかし、妙に気が落ち着く感じがする。

…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ

それは、まるで、この空間だけが、他の世界から切り離されたような感覚。

…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ

永遠に続くような感覚。

…えいえん

永遠? その言葉に妙なひっかかりを感じだ。なにか………なにか、大切なものを忘れているような…そんな、感覚だ。なんだろう……この、感覚は……。

長森「浩平ーっ、お茶、煎れてきたよーっ!」

ふと、変な考えに入りそうになっていた、オレは長森の言葉で現実に帰ってきた。

長森「ほら、暖まる………って、浩平っ! 空っ!!!」

長森の声で、再び空を見上げる。ほんとうに、雨のように、流れ星が降っていた。まるで、空の中に落ちていくような感覚。

長森「凄いねぇ、初めてみたよ」

お盆にお茶を乗せたまま、長森が空を見上げていた。

浩平「………ああ、綺麗だ」

綺麗なだけじゃない、何かをも、感じていた。なんだろう? この感覚は…。

長森「ほんと、凄いよねぇ」

そのまま、ふたりでずっと空をみあげていた。


★      ☆      ★


私は、学校の屋上にいた。もちろん、部員たちも一緒だ。こんな時間に学校にいること自体大問題な気もするが、ルーズな学校の所為で平気だった。

部員「部長、なかなか、降ってきませんね」

そう、部員と一緒に、滅多に見られないと言う、流れ星を見に来たのだった。

深山「まあ、33年の内、ほんの数分なんだから、簡単には見れないでしょう」

そんな中。わたしは、あの子の元へ向かった。その子は、一生懸命流れ星にお願いをしていようとしていた。………でも、1,2秒で、消えてしまうため、3回も唱える事ができないらしく、その度毎に、はう〜という感じで、うなだれている。

深山「大丈夫よ、まだまだ、降ってくるらしいから」

澪「………」
うんっ!

そういってる側から、また流れ星が落ちる。

澪「………」
はう〜っ。

…また、駄目だったみたい。ほんとうに、要領悪いな、この子は。

深山「なにを、お願いしているの?」

あまりに、一生懸命なので、訊いてみる。

『      』

…スケッチブックに、書いてくれたのは良いけど、…暗くて読めない。

深山「大事なことなのね?」

澪「………」
うんっ!

力強く頷く。そして、もう一冊の、ぼろぼろのスケッチブックをぐっと、握る。

よほど、大事なものなんだな、そう思う。

部員「部長!! 部長!! 見て下さいよ!!!」

その声で、視線を空に、戻す。

深山「へぇ〜っ」

なるほど、噂に違わない、見事な流れ星だった。まるで、空そのものが落ちてきているような、そんな風景。

澪「………」
わぁ〜っ!

上月さんも、お願い事の事を忘れて、その風景を楽しんでいた。部員のみんなも、言葉を失って、ただ、その空を見上げていた。

今度の演劇は、良いものが出来そうだ。そんな気がした。

こんな、みんなとずっと、楽しくやっていけたら良いな。そう思う。


★      ☆      ★


詩子「茜〜っ!」

詩子が、いつもどおり慌ただしく駆け寄ってきた。

詩子「ごめん、ねすごしたっ!」

茜「…平気です」

いちいち、詩子の行動に腹を立ててはいられない。ベランダに置いていたワッフルを食べる。詩子も、ワッフルを1つとって、口に放り込んだ。

詩子「あっ! 流れ星っ!!」

詩子の強引な誘いで、私の家で流れ星を見ることにした。ほんと、詩子はお祭り事が好きだ。

茜「…流れ星、沢山見えてます」

ぽつ、ぽつ、と一定の間隔で落ちてくる流れ星。

詩子「でも、思ったより派手じゃないんだね。ほら、TVとかで、もっと騒いでたじゃない」

すこし、ふてくされたように言う。

茜「…これで十分です」

詩子「そう? もっと、沢山降った方が綺麗だよ、きっと」

そういって、また空を見上げる。と、突然、今までとは比べものにならないほどの流れ星が降ってきた。

詩子「ああああっ! 茜っ! 凄いよ!!! ほら、見て見てっ!!!」

茜「…見てます」

雨のように。本当に雨のように降ってくる流れ星。それは、沢山の涙のようにも見えた。

詩子「こんなに沢山、どっから降ってくるんだろうねえ」

茜「…空の向こうです」

そう、空の向こう。そこにいるはずなのだ。あいつは………。

あいつも、この空………見てるのかな? この、非日常的な光景………。

………雨。

そのまま、流れ星を眺め続ける。やけに詩子が静かだと思っていたら、案の定眠っていた。私は、詩子を起こさないように、毛布をかけてあげた。

その光景は、まるで時間の流れを感じさせないような、そんな光景だった。

………どれだけの時間そうしていたのか。流れ星が、一時の勢いを失い、夜が明け始めた。はやり、終わりは来る。どんなものにも。

詩子「あ、お願い事! お願い事しなきゃもったいないよ、茜っ!!」

突然、詩子が、飛び起きてそんなことを言った。そのまま、もごもごと何かを言った。

詩子「うん、やっぱり流れ星といえば、お願い事だよね。ねえ、茜は何をお願いした?」

茜「…なにも」

詩子「ええっ?! どうしてお願いしないのっ!? もったいないよ!!」

茜「…そうですか?」

願い事。………無い訳ではない。でも………いまの私には、何を願ったらいいのか。それが分からなかった。

詩子「茜、欲がないね」

茜「…そんなことないです」

考えることはあった。ずっと。そう、あの日からずっと。


★      ☆      ★


「わあっ、凄いよ。お母さんっ!」

どこからか、そんな声が聞こえてきた。

…そうか、いまちょうど流れ星が凄いんだ。

「ねえ、見て見てっ!!」

「見てるわよ」

「でも、こんなにお星様、落ちてきたら。空の星、なくなっちゃうよねえ?」

「大丈夫、減らないわよ」

そんな、他愛も無い会話が、耳に入ってくる。そっか、そんなに綺麗な空なんだ。よかったよね、晴れてくれて。………私は、直接見ることは出来ないけどね。

ビシッ

微かに、本当に微かに、何かの音がしたような気がする。なんの音だろう? 今までに聞いたことが無い音だ。

雨みたいに降るって、言ったっけ。

ビシッ

どんな、光景なのかな? こればっかりは、見てみないと分からないよね。

ビシッ

また、聞こえた。なんの音だろう?

ビシッ ビシッ

あ、もしかして? 流れ星の音かな?

ビシッ

その、質問に「うん」と、答えるかのように音が鳴った。そっか、私にも見えるんだね? 流れ星。

ビシッ

あ、そうだ。お願い事しないとね。なにがいいかな?

かなえて欲しいことは、たくさんあった。でも全部って言うのは欲張りだよね? どうしよう?

ずっと、お願い事を考えていた。


★      ☆      ★


ガサガサガサ………。

なんだろう? ねていたのに、ガサガサうるさいから、目がさめた。

起きてみる。

ぽふっと、なにかが飛び込んできた。

みゅーだ。みゅーが、暴れてたんだ。

みゅーは、私の周りを回っている。おもしろいからしばらく見ていた。

友達だもんね。

みゅーは、窓のところで、ガリガリやってる。そとに、でたいのかな?

窓を開けてみる。

椎名「わぁ♪」

空が明るかった。星がたくさん、落ちていた。たくさん、たくさん、たくさん。

椎名「みゅーっ!」

これを、教えたかったんだね? みゅー。

みゅーは、またぐるぐる、回っている。わたしは、空を見る。すごいなあ。

………。

……。

………。

あ、気づいたらみゅーが丸くなってねてる。わたしも、寝よう。

みゅー、明日もあそぼうね。

 

ずっと。


★      ☆      ★


女の子「ねえ、留美?」

七瀬「ん、何?」

女の子「本当に、引っ越ししちゃうんだよね?」

七瀬「うん」

………仲のいい友達。そんなみんなと、夜空を見上げている。

女の子「わたしは、寂しいよ。留美が居なくなっちゃうと。だって、楽しかったからね」

七瀬「…そう」

どこか、上の空で聞いていた。

女の子「ねえ、留美、聞いてる?」

七瀬「え?……あ、うん。聞いてるよ」

他にも、友達は居るんだけど。みんな寝ちゃってる。あれほど、「一生に一度の景色をみるんだっ!」って言ってたのにね。

女の子「………だからさ。手紙、送ってよね? 向こう行っても」

七瀬「え? 手紙!? あ………いいかもしれない」

女の子「え? いいかもって?」

七瀬「手紙書くの。うん、乙女っぽい! 『風の入り込む窓際で手紙を書く』 うん。」

忘れない内に、メモしておこう。

女の子「まだ言ってるの。留美ってば。そんな乙女だなんて」

七瀬「いいのっ! わたしはやるんだから」

そう、わたしは乙女になるんだ。引っ越しをきっかけに。いままでの私じゃない。

女の子「続かないって」

七瀬「続けてみせるわよっ!」

ぐっと、拳を握る。

女の子「そこそこ、乙女になり切れていないわよ」

七瀬「あ…!」

そう言って、ふたりで笑った。

女の子「あ! 流れ星っ!」

あいにくの曇り空だったけど、それでも雲の隙間から、いくつかの流れ星が見えた。

七瀬「あ、お願いごとっ!!」

………。

七瀬「いえなかったぁっ」

女の子「あははっ、相変わらず不器用だね、留美はっ」

七瀬「笑わなくても、良いじゃないっ!」

女の子「ごめん、ごめん。大丈夫、また出るよ」

七瀬「うん」

失ったもの、取り戻すんだ。王子様と一緒に、ね。そしてずっと暮らすんだ。


★      ☆      ★


こうして、それぞれの朝を向かえた。

それぞれの、太陽。

それぞれの、光。

それぞれの、朝。

それぞれの……。

………。

……。

………。

近づいていた。

運命の分かれ道が……。

そして、彼らはどこへたどり着くのか………。


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