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※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)
浩平「ながもりー、寝るなよぉお」
長森「ねてないよっ、寝そうなのは浩平だよっ」
たしかに。別に夜更かし苦手なわけではないのだが、こう何にも起こらないと、眠くもなると言うものだ。
長森「今日は、33年に一度のすごい流れ星が見られるから、見ようっていったの、浩平じゃないっ」
しかし、流れ星は、ぽつ、ぽつと降っているくらいだ。
浩平「うーっ、ちっとも雨みたいに降らないじゃないかっ。気象庁の嘘つきっ!」
長森「気象庁は関係ないよっ!」
浩平「じゃあ、科学技術庁だ!」
長森「そっちも関係ないよっ!」
浩平「俺たちの血税をなんだと思ってるんだ!」
長森「意味不明だよっ!」
そんな風に、いつもどおりのやりとりを続けながら、ぽーっと、空を眺める。たまには、こんな時間も良いものだ。
浩平「しかし、寒いな」
長森「あ、私、お茶入れてくるよ」
ぱたぱたと、キッチンへ降りていく。熱いお茶でも持ってきてくれるんだろう。
…ぽつ ぽつ
不規則な…それでいて、一定の間隔を置いて、流れ星が降ってくる。
…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ
しばらくまえから、ずーっとこんな感じだ。これでは、眠くもなると言うものだ。
…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ
しかし、妙に気が落ち着く感じがする。
…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ
それは、まるで、この空間だけが、他の世界から切り離されたような感覚。
…ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ
永遠に続くような感覚。
…えいえん
永遠? その言葉に妙なひっかかりを感じだ。なにか………なにか、大切なものを忘れているような…そんな、感覚だ。なんだろう……この、感覚は……。
長森「浩平ーっ、お茶、煎れてきたよーっ!」
ふと、変な考えに入りそうになっていた、オレは長森の言葉で現実に帰ってきた。
長森「ほら、暖まる………って、浩平っ! 空っ!!!」
長森の声で、再び空を見上げる。ほんとうに、雨のように、流れ星が降っていた。まるで、空の中に落ちていくような感覚。
長森「凄いねぇ、初めてみたよ」
お盆にお茶を乗せたまま、長森が空を見上げていた。
浩平「………ああ、綺麗だ」
綺麗なだけじゃない、何かをも、感じていた。なんだろう? この感覚は…。
長森「ほんと、凄いよねぇ」
そのまま、ふたりでずっと空をみあげていた。
私は、学校の屋上にいた。もちろん、部員たちも一緒だ。こんな時間に学校にいること自体大問題な気もするが、ルーズな学校の所為で平気だった。
部員「部長、なかなか、降ってきませんね」
そう、部員と一緒に、滅多に見られないと言う、流れ星を見に来たのだった。
深山「まあ、33年の内、ほんの数分なんだから、簡単には見れないでしょう」
そんな中。わたしは、あの子の元へ向かった。その子は、一生懸命流れ星にお願いをしていようとしていた。………でも、1,2秒で、消えてしまうため、3回も唱える事ができないらしく、その度毎に、はう〜という感じで、うなだれている。
深山「大丈夫よ、まだまだ、降ってくるらしいから」
澪「………」
うんっ!
そういってる側から、また流れ星が落ちる。
澪「………」
はう〜っ。
…また、駄目だったみたい。ほんとうに、要領悪いな、この子は。
深山「なにを、お願いしているの?」
あまりに、一生懸命なので、訊いてみる。
『 』
…スケッチブックに、書いてくれたのは良いけど、…暗くて読めない。
深山「大事なことなのね?」
澪「………」
うんっ!
力強く頷く。そして、もう一冊の、ぼろぼろのスケッチブックをぐっと、握る。
よほど、大事なものなんだな、そう思う。
部員「部長!! 部長!! 見て下さいよ!!!」
その声で、視線を空に、戻す。
深山「へぇ〜っ」
なるほど、噂に違わない、見事な流れ星だった。まるで、空そのものが落ちてきているような、そんな風景。
澪「………」
わぁ〜っ!
上月さんも、お願い事の事を忘れて、その風景を楽しんでいた。部員のみんなも、言葉を失って、ただ、その空を見上げていた。
今度の演劇は、良いものが出来そうだ。そんな気がした。
こんな、みんなとずっと、楽しくやっていけたら良いな。そう思う。
詩子「茜〜っ!」
詩子が、いつもどおり慌ただしく駆け寄ってきた。
詩子「ごめん、ねすごしたっ!」
茜「…平気です」
いちいち、詩子の行動に腹を立ててはいられない。ベランダに置いていたワッフルを食べる。詩子も、ワッフルを1つとって、口に放り込んだ。
詩子「あっ! 流れ星っ!!」
詩子の強引な誘いで、私の家で流れ星を見ることにした。ほんと、詩子はお祭り事が好きだ。
茜「…流れ星、沢山見えてます」
ぽつ、ぽつ、と一定の間隔で落ちてくる流れ星。
詩子「でも、思ったより派手じゃないんだね。ほら、TVとかで、もっと騒いでたじゃない」
すこし、ふてくされたように言う。
茜「…これで十分です」
詩子「そう? もっと、沢山降った方が綺麗だよ、きっと」
そういって、また空を見上げる。と、突然、今までとは比べものにならないほどの流れ星が降ってきた。
詩子「ああああっ! 茜っ! 凄いよ!!! ほら、見て見てっ!!!」
茜「…見てます」
雨のように。本当に雨のように降ってくる流れ星。それは、沢山の涙のようにも見えた。
詩子「こんなに沢山、どっから降ってくるんだろうねえ」
茜「…空の向こうです」
そう、空の向こう。そこにいるはずなのだ。あいつは………。
あいつも、この空………見てるのかな? この、非日常的な光景………。
………雨。
そのまま、流れ星を眺め続ける。やけに詩子が静かだと思っていたら、案の定眠っていた。私は、詩子を起こさないように、毛布をかけてあげた。
その光景は、まるで時間の流れを感じさせないような、そんな光景だった。
………どれだけの時間そうしていたのか。流れ星が、一時の勢いを失い、夜が明け始めた。はやり、終わりは来る。どんなものにも。
詩子「あ、お願い事! お願い事しなきゃもったいないよ、茜っ!!」
突然、詩子が、飛び起きてそんなことを言った。そのまま、もごもごと何かを言った。
詩子「うん、やっぱり流れ星といえば、お願い事だよね。ねえ、茜は何をお願いした?」
茜「…なにも」
詩子「ええっ?! どうしてお願いしないのっ!? もったいないよ!!」
茜「…そうですか?」
願い事。………無い訳ではない。でも………いまの私には、何を願ったらいいのか。それが分からなかった。
詩子「茜、欲がないね」
茜「…そんなことないです」
考えることはあった。ずっと。そう、あの日からずっと。
「わあっ、凄いよ。お母さんっ!」
どこからか、そんな声が聞こえてきた。
…そうか、いまちょうど流れ星が凄いんだ。
「ねえ、見て見てっ!!」
「見てるわよ」
「でも、こんなにお星様、落ちてきたら。空の星、なくなっちゃうよねえ?」
「大丈夫、減らないわよ」
そんな、他愛も無い会話が、耳に入ってくる。そっか、そんなに綺麗な空なんだ。よかったよね、晴れてくれて。………私は、直接見ることは出来ないけどね。
ビシッ
微かに、本当に微かに、何かの音がしたような気がする。なんの音だろう? 今までに聞いたことが無い音だ。
雨みたいに降るって、言ったっけ。
ビシッ
どんな、光景なのかな? こればっかりは、見てみないと分からないよね。
ビシッ
また、聞こえた。なんの音だろう?
ビシッ ビシッ
あ、もしかして? 流れ星の音かな?
ビシッ
その、質問に「うん」と、答えるかのように音が鳴った。そっか、私にも見えるんだね? 流れ星。
ビシッ
あ、そうだ。お願い事しないとね。なにがいいかな?
かなえて欲しいことは、たくさんあった。でも全部って言うのは欲張りだよね? どうしよう?
ずっと、お願い事を考えていた。
ガサガサガサ………。
なんだろう? ねていたのに、ガサガサうるさいから、目がさめた。
起きてみる。
ぽふっと、なにかが飛び込んできた。
みゅーだ。みゅーが、暴れてたんだ。
みゅーは、私の周りを回っている。おもしろいからしばらく見ていた。
友達だもんね。
みゅーは、窓のところで、ガリガリやってる。そとに、でたいのかな?
窓を開けてみる。
椎名「わぁ♪」
空が明るかった。星がたくさん、落ちていた。たくさん、たくさん、たくさん。
椎名「みゅーっ!」
これを、教えたかったんだね? みゅー。
みゅーは、またぐるぐる、回っている。わたしは、空を見る。すごいなあ。
………。
……。
………。
あ、気づいたらみゅーが丸くなってねてる。わたしも、寝よう。
みゅー、明日もあそぼうね。
ずっと。
女の子「ねえ、留美?」
七瀬「ん、何?」
女の子「本当に、引っ越ししちゃうんだよね?」
七瀬「うん」
………仲のいい友達。そんなみんなと、夜空を見上げている。
女の子「わたしは、寂しいよ。留美が居なくなっちゃうと。だって、楽しかったからね」
七瀬「…そう」
どこか、上の空で聞いていた。
女の子「ねえ、留美、聞いてる?」
七瀬「え?……あ、うん。聞いてるよ」
他にも、友達は居るんだけど。みんな寝ちゃってる。あれほど、「一生に一度の景色をみるんだっ!」って言ってたのにね。
女の子「………だからさ。手紙、送ってよね? 向こう行っても」
七瀬「え? 手紙!? あ………いいかもしれない」
女の子「え? いいかもって?」
七瀬「手紙書くの。うん、乙女っぽい! 『風の入り込む窓際で手紙を書く』 うん。」
忘れない内に、メモしておこう。
女の子「まだ言ってるの。留美ってば。そんな乙女だなんて」
七瀬「いいのっ! わたしはやるんだから」
そう、わたしは乙女になるんだ。引っ越しをきっかけに。いままでの私じゃない。
女の子「続かないって」
七瀬「続けてみせるわよっ!」
ぐっと、拳を握る。
女の子「そこそこ、乙女になり切れていないわよ」
七瀬「あ…!」
そう言って、ふたりで笑った。
女の子「あ! 流れ星っ!」
あいにくの曇り空だったけど、それでも雲の隙間から、いくつかの流れ星が見えた。
七瀬「あ、お願いごとっ!!」
………。
七瀬「いえなかったぁっ」
女の子「あははっ、相変わらず不器用だね、留美はっ」
七瀬「笑わなくても、良いじゃないっ!」
女の子「ごめん、ごめん。大丈夫、また出るよ」
七瀬「うん」
失ったもの、取り戻すんだ。王子様と一緒に、ね。そしてずっと暮らすんだ。
こうして、それぞれの朝を向かえた。
それぞれの、太陽。
それぞれの、光。
それぞれの、朝。
それぞれの……。
………。
……。
………。
近づいていた。
運命の分かれ道が……。
そして、彼らはどこへたどり着くのか………。