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※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)
「あれ…?」
ふと感じた違和感。
私、何やってるんだろう? こんな格好して………。
誰かを待っていたんだっけ?
………。
まるで、ダンスにでも行くような格好………。
ダンス!?
って、そうよ。折原っ! 折原 浩平を待ってるんじゃないっ!
………なんで、いま忘れていたんだろう。
ずっと、本当に一緒に居たい人だったのに。どうして………。
そして、その日。折原はやってこなかった…。
がちゃり。
受話器を置いた。
「どういう………こと?」
折原の家に電話をかけても、そこには、折原の叔母さん……だった人が居るだけだった。そして、その人は折原のことを知らないようだった。
翌日。学校に行っても折原は来なかった。
いつものように、遅刻ぎりぎりになって瑞佳と駆け込んで来るんじゃないかって。思っていたけど……来なかった。
瑞佳が一人で来ただけだった。
もしかしたら、病気にでもなったんじゃ。そう思って瑞佳に訊いてみる。
「ねえ、瑞佳」
「ん? 七瀬さん? どうしたの?」
「折原の事なんだけど…」
「折原……さん?」
「うん、折原浩平。どうしたか? 知らない? あいつ、私との約束すっぽかしたのよ」
沈黙。
「私、折原なんて名字の人知らないけど…」
「え?…」
全身の血液の流れが、ぴたっと止まったような間隔。
「だって、瑞佳の幼なじみでしょう!? 毎朝、一緒に来てたじゃないっ!」
「私に、幼なじみなんていないけど………それに毎朝一人で来てたし…」
そう言う瑞佳の顔からは、表情が消えていた。
「七瀬さん、誰かと勘違いしてるんじゃないかな?」
「そう…ね」
勘違いなんて、していない。
「ねえ、住井君」
「七瀬さんから声をかけてくれるなんて嬉しいなあ」
「折原ってどうしてるの?」
「折原……!? 誰だい? それ」
………。
「先生」
「んー、どうしたぁー七瀬。」
「あの、折原君の事なんですけど」
「折原? ………どこのクラスだ?」
「えっ、ここのクラスです」
「七瀬。このクラスに折原なんて奴は、いないし。オレも教師生活、うん十年。折原なんて生徒受け持ったことはないぞ」
………。
何がなんだか………分からなくなっちゃった。
1ヶ月。
2ヶ月。
3ヶ月……。
私は待ち続けた。
あいつが、くるのを。
あいつが、遅刻してばつの悪そうな顔をしてやってくるのを……。
「学校サボって、一緒に居られないかな?」
「七瀬と一緒にいたいんだ」
折原………あんた。こうなること知っていたの?
知ってて私に教えなかったの?
私は、非日常に生きていた。
私の日常は、折原と一緒に居ることだったから。
でも、それでも時間は過ぎていく。
無情に。
残酷に…。
その悲しみを紛らわせるかのように、友達をたくさん作った。真希もその一人だ。
最初はただのバカ女かと思っていたけど、つき合ってみるとそれほど悪い奴じゃなかったりする。
でも、どんなに他の友達と騒いでも、いや騒げば騒ぐほど……帰って、あいつが居ないことの寂しさは、強くなってしまった。
「なにか妄想癖でもあるのかしら…」
もし、この世界に折原が居ないとしたら。折原という存在が妄想だと捕らえられてしまうなら………。私は妄想癖なのかも知れない。
でも、私は待っている。大遅刻のあいつを。
「…誰かを待っているんですか?」
そんな私に、声をかける人が居た。同じクラスの人だ。茜って言ったかな? 私はあんまり話をしたことがないけど、折原とはちょくちょく話をしていたな。
「ええ」
「…私も待ってる人が居るんです」
普段は滅多に話さない子だ。それがどうしたわけか、積極的に話してくる。
「待っている?」
「…はい。ある場所で分かれた幼なじみです」
淡々と喋る。
「分かれた?」
「…はい。………消えてしまったんです」
「消えた!?」
思わず、聞き返してしまう。
「…あなたも同じなんですね?」
「………。」
折原が…消えた。今まで漠然とは考えていたこと。でも、こうはっきり言われると…。
「どうして?」
「…私と同じ目をしていましたから。私と同じように、何も無いところを見つめていましたから」
「………。」
「…帰ってくると、いいですね」
時間は過ぎていく。
決して止まってはくれない。
止まっているのは。私の心の中の時間だけだ。
公園の景色も変わっていく。
木の葉は、芽生え、青々と色づき、紅葉し、散っていく。
でも、私は変わらない。
あの日のまま。あの時のまま。
そして、1年。
1つ、年が巡ってしまった。
1年って時間は長くて。
…残酷で。
もう、止めよう。非日常に生きるのは。
日常に、生きよう。
そして、日常の中で………。
がたんっ!がたんっ!がたんっ!がたんっ!がたんっ!!
私が離れていた日常……。
「格好悪い」
そう、日常だから。私が望んでいた日常だから……。
「お乗り下さい、お姫様」
「そう、いい感じ」
私も、いつもの私で折原に応える。だけど、心の中では…。