ONE SS第10章
〜七瀬の章〜

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




「あれ…?」

ふと感じた違和感。

私、何やってるんだろう? こんな格好して………。

誰かを待っていたんだっけ?

………。

まるで、ダンスにでも行くような格好………。

ダンス!?

って、そうよ。折原っ! 折原 浩平を待ってるんじゃないっ!

………なんで、いま忘れていたんだろう。

ずっと、本当に一緒に居たい人だったのに。どうして………。

そして、その日。折原はやってこなかった…。

 

★      ☆      ★

 

がちゃり。

受話器を置いた。

「どういう………こと?」

折原の家に電話をかけても、そこには、折原の叔母さん……だった人が居るだけだった。そして、その人は折原のことを知らないようだった。

翌日。学校に行っても折原は来なかった。

いつものように、遅刻ぎりぎりになって瑞佳と駆け込んで来るんじゃないかって。思っていたけど……来なかった。

瑞佳が一人で来ただけだった。

もしかしたら、病気にでもなったんじゃ。そう思って瑞佳に訊いてみる。

「ねえ、瑞佳」

「ん? 七瀬さん? どうしたの?」

「折原の事なんだけど…」

「折原……さん?」

「うん、折原浩平。どうしたか? 知らない? あいつ、私との約束すっぽかしたのよ」

沈黙。

「私、折原なんて名字の人知らないけど…」

「え?…」

全身の血液の流れが、ぴたっと止まったような間隔。

「だって、瑞佳の幼なじみでしょう!? 毎朝、一緒に来てたじゃないっ!」

「私に、幼なじみなんていないけど………それに毎朝一人で来てたし…」

そう言う瑞佳の顔からは、表情が消えていた。

「七瀬さん、誰かと勘違いしてるんじゃないかな?」

「そう…ね」

勘違いなんて、していない。

「ねえ、住井君」

「七瀬さんから声をかけてくれるなんて嬉しいなあ」

「折原ってどうしてるの?」

「折原……!? 誰だい? それ」

………。

「先生」

「んー、どうしたぁー七瀬。」

「あの、折原君の事なんですけど」

「折原? ………どこのクラスだ?」

「えっ、ここのクラスです」

「七瀬。このクラスに折原なんて奴は、いないし。オレも教師生活、うん十年。折原なんて生徒受け持ったことはないぞ」

………。

何がなんだか………分からなくなっちゃった。

1ヶ月。

2ヶ月。

3ヶ月……。

私は待ち続けた。

あいつが、くるのを。

あいつが、遅刻してばつの悪そうな顔をしてやってくるのを……。

 

「学校サボって、一緒に居られないかな?」

「七瀬と一緒にいたいんだ」

折原………あんた。こうなること知っていたの?

知ってて私に教えなかったの?

 

私は、非日常に生きていた。

私の日常は、折原と一緒に居ることだったから。

でも、それでも時間は過ぎていく。

無情に。

残酷に…。

 

その悲しみを紛らわせるかのように、友達をたくさん作った。真希もその一人だ。

最初はただのバカ女かと思っていたけど、つき合ってみるとそれほど悪い奴じゃなかったりする。

でも、どんなに他の友達と騒いでも、いや騒げば騒ぐほど……帰って、あいつが居ないことの寂しさは、強くなってしまった。

 

「なにか妄想癖でもあるのかしら…」

もし、この世界に折原が居ないとしたら。折原という存在が妄想だと捕らえられてしまうなら………。私は妄想癖なのかも知れない。

 

でも、私は待っている。大遅刻のあいつを。

「…誰かを待っているんですか?」

そんな私に、声をかける人が居た。同じクラスの人だ。茜って言ったかな? 私はあんまり話をしたことがないけど、折原とはちょくちょく話をしていたな。

「ええ」

「…私も待ってる人が居るんです」

普段は滅多に話さない子だ。それがどうしたわけか、積極的に話してくる。

「待っている?」

「…はい。ある場所で分かれた幼なじみです」

淡々と喋る。

「分かれた?」

「…はい。………消えてしまったんです」

「消えた!?」

思わず、聞き返してしまう。

「…あなたも同じなんですね?」

「………。」

折原が…消えた。今まで漠然とは考えていたこと。でも、こうはっきり言われると…。

「どうして?」

「…私と同じ目をしていましたから。私と同じように、何も無いところを見つめていましたから」

「………。」

「…帰ってくると、いいですね」

 

時間は過ぎていく。

決して止まってはくれない。

止まっているのは。私の心の中の時間だけだ。

 

公園の景色も変わっていく。

木の葉は、芽生え、青々と色づき、紅葉し、散っていく。

でも、私は変わらない。

あの日のまま。あの時のまま。

 

そして、1年。

1つ、年が巡ってしまった。

1年って時間は長くて。

…残酷で。

 

もう、止めよう。非日常に生きるのは。

日常に、生きよう。

そして、日常の中で………。

 

 

がたんっ!がたんっ!がたんっ!がたんっ!がたんっ!!

私が離れていた日常……。

「格好悪い」

そう、日常だから。私が望んでいた日常だから……。

「お乗り下さい、お姫様」

「そう、いい感じ」

私も、いつもの私で折原に応える。だけど、心の中では…。


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