ONE SS第11章
〜不変の日常〜

※ このSSは、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




日常は、ずっと続くと思っていた。

遙か彼方へ続く線路のように。

毎日昇る太陽のように。

限りなく続くものだと思っていた。

昨日も日は昇ったし、今日も、明日も、明後日も、ずっと昇る。

そう、思っていた。

明日、朝日が昇らない事なんて考えもしなかった。

考えもしなかった。

だからこそ、ぼくは…。


★      ☆      ★

 

カシャアッ!

いつものようにカーテンの引かれる音と、そして目の奥を貫く陽光。

長森「ほら、起きなさいよーっ!」

浩平「うーん、今日は良い天気だから学校休む」

長森「なんで、そうなるんだよっ!」

また、今日もお節介な幼なじみがオレを起こしに来た。

浩平「ばかっ、こんな良い天気の日に朝寝を楽しまないで、人生を謳歌できるか」

ばさあっ!

オレの言うことなんか、耳も貸さずに布団をとられてしまう。

浩平「うう………年寄りの唯一の楽しみを奪ってしまうのかぁ?」

長森「なにが年寄りだよ。早く準備してよっ!」

そう言って、時計を突きつけられる。

いつも通りにやばい時間だった。

浩平「ぐあ、もうこんな時間じゃないか…」

グッドタイミングで、鞄と制服を受け取りキッチンへ向かう。そこに用意されていたおにぎり(コンビニの奴だ)を、一個あたり、二口で放り込む。

長森「ほらーっ、あわてて食べるから海苔が散れてるよーっ!」

丁寧に、海苔を取り払う。ま、そこら辺の雑用は、メイドの長森に任せるとして、オレは歯を磨き、トイレに入った。

浩平「まだ、余裕だろ?」

長森「余裕じゃないよっ! 大変な時間だよっ!」

うーん、トイレでのんびりと100数えていたのが思いの外、時間をくってしまったらしい。

浩平「よし! いくぞっ!」

今日も、玄関を出ると、そのまま1500メートルマラソン。…寝起きのマラソンは心臓に良くないんだっけ?

 

それは、いつも通りの展開。

毎朝、繰り返されてきた日常。

それが当たり前で。

それが自然で。

それは、変わらない日常。

変わるはずのない日常。

 

キーンコーンカー…

浩平「セーフっ!」

チャイムが鳴り出すと同時に、教室に滑り込んだ。

それから、少し遅れて長森が到着する。

七瀬「折原っ!」

教室に入るなり、何故か騒がしい。

七瀬「これ、なんとかしなさいよっ!」

お下げに、椎名をぶら下げたまま、七瀬が歩み寄ってきた。

浩平「よ! 椎名。今日も元気そうだな」

椎名「みゅーっ!」

七瀬「こいつは、元気すぎるのよっ!」

浩平「七瀬も元気そうじゃないか」

七瀬「困ってるのよっ!」

しかし、ほとんど椎名が体重をかけているのに切れない七瀬の髪は丈夫だな。

よし、こんど髪の毛十本あたり、どの程度の重さまで、耐えられるか試してやろう。

髭「んあー、静かにしろーっ」

そんな朝の騒ぎは、今日も髭の声が聞こえるまで続いた。

 

それは、いつも通り。

いつも通りの、朝の光景。

何も変わらない。

繰り返す日常。

違うけど、違わない。

 

浩平「南、机といすを差し押さえる!」

南「こら! 勝手に、人の机を取り上げるんじゃない!」

浩平「罪人に、聞く耳は持たん」

南「何の罪だ!」

浩平「折原浩平反逆罪」

ここで、やりきれないようなため息をつく。

南「わーった。貸してやるよ。5時間目までにはかえせよっ!」

そう言うと、学食へと向かった。忙しない奴だ。

浩平「ぬおっ! なんと、こんな所に茜の席がああぁっ!」

わざとらしく、両腕をあげるオーバーアクションをしてやる。

浩平「と、言うことで一緒に飯でも食おう」

袋から、3色パンを取り出して、口に放り込む。

茜「…もう食べてます」

流石に、もう中庭には逃げないようだ。

浩平「しっかし、よくそれで足りるよなあ。茜は省エネ型か?」

茜「…私は、浩平みたいにがめつくありませんから」

うっ。この前食った、弁当のこと言ってるのか?

 

日常。

それは、毎日の退屈な繰り返し。

どこにでもあって、ここにしかない光景。

それは、毎日の幸せな繰り返し。

 

みさき「浩平君っ!」

一人寂しく、帰宅しようとすると、聞き慣れた声が聞こえる。

澪「……」
こり。

みさき先輩と澪だった。

浩平「どうした? 二人で愛の語らいでもしてたのかー?」

みさき「違うよ〜、演劇部の公演の事訊こうとしてたんだよ〜」

澪「……」
んうん。

だから、二人じゃ無理だって。………たぶん。

みさき「手に字を書いて貰ってたんだけど。よく分からないんだよ〜」

なるほど、その手があったか。頑張れば、二人だけでコミュニケーションがとれるかもしれない。

浩平「で、澪も出演するのか?」

澪「……」
んっ! うんっ!

浩平「出るらしいぞ」

目の見えない先輩に伝えてやる。

みさき「どんな役をやるのかな?」

うん、それは個人的に興味のある内容だ。松の木だったら笑うが。

澪『あのね』

澪『声が出なくなった女の子』

まんま、だった。

浩平「声が出なくなった女の子の役だそうだ」

みさき「すごいね〜」

小さな事に大きく感心する先輩。そして、すこし照れる澪。

 

繰り返される日常。

回り続ける歯車。

落ち続ける砂時計。

止まることなく…。

変わることなく…。

そして…。

 

ごろんと、横になる。今日一日も非常に疲れた。

他愛もないラジオでも聴いていると、すぐにでも眠りにつけそうだった。

今日も平凡な一日だった。

平凡で………そして、楽しい一日。

それは、今日だけじゃない。

明日も、明後日も、その次も……ずっと。同じような日が続く。

そう思いたい……。

そう思っていたかった。

 

 

「えいえんはあるよ」

「ここにあるよ」



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