ONESS7章−ONE-TT
〜みさおの時〜

※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)




「じゃあ、ここでお別れ」

オレに永遠の存在を教えてくれた少女が、そう告げた。

「え? お別れって………」

世界がぐにゃりと歪んだ。

「浩平……」

そして、その少女が消えた。

「うっ…」

その世界は、まずます溶けていくように崩れていく。ひどく気分が悪い。まるでひどく船酔いでもした後かのようだ。終わるはずのない永遠の世界が終わろうとしているのか…?

消えそうな意識でそんなことを考える。いや、この世界は終わらないはずだ。だったら……。

 

 

★      ☆      ★

 

 

目を開ける。

気持ちよく晴れた空だった。でも、さっきまでいた世界の空じゃない。

「戻って…来たのか?」

あたりを見渡してみる。…違う。オレの住んでいた町じゃない。そして妙に静かだ。周囲に誰もいないかのように、見える。

「まだ、永遠の世界なのか?」

そう考える脇を幼稚園生ぐらいの子供がじゃれ合いながら、駆けていった。

「いや、違う。ここは永遠の世界じゃない」

そう確信できる。大きな根拠はなかったが、いままでずっと、限りある世界と永遠の世界に住んでいたオレにはそれが分かる。

しかし、ここはどこで、いまはいつなんだ?

 

 

ん? 妙な違和感。いや、………これは…………………懐かしさ?

そう、オレはこの町に見覚えがあった。ここは………オレが生まれ育った町?

みさおと一緒に生まれ育った場所じゃないかっ!

「この角を、右に曲がると公園…………」

もう、ほとんど消えかけた記憶を引っぱり出し、その町を歩いてみる。そして、記憶通りその場所に、公園はあった。

「懐かしいな……」

その町は、オレが住んでいたときのままだった。とは言っても、懐かしがってばかりも居られない。ここからは遠い中崎町だが、はやく帰って彼女を安心させてやりたい。記憶をたぐり寄せ、駅へと向かう。

と、駅に行こうとするとコンビニが目に入った。

「そういや、今が何年何月何日なのか分からないんだよな」

記憶喪失になったわけでもないのに、こんな目に遭うとは思わなかった。そのコンビニにはいり、やすいスポーツ新聞を一冊買う。

あれ? なんか、目に入った1面記事。……これって、かなり昔にも同じ事なかったっけ? そう思い。新聞の一番上、今日の日付をみる。

 

86年 5月 12日

 

……嘘だろ? 愕然とした。もう一度、暦を見る。たしかに86年。10年以上も昔じゃないかっ。どうしてこんな事に…。

………。

……。

………。

でも、まあ、不思議でもないか。永遠の世界は時間の概念がない世界だ。過去に戻ったとしても不思議はない。

まてよ…………10年以上前に戻ったってことは………。

ふと、あることを思いつき。思わず走り出した。

 

「折原」

 

その表札が見えた。オレとみさおが育った家だ。おもわず、その中に入ろうとして二の足を踏んだ。いまのオレは、当時のみさおからみれば、他人にしかうつらないはずだ。そんな、混乱をさせるような事はしたくない。

そう考え向きを反転する。大好きなみさおを混乱させるわけには行かなかった。逢いたいという考えを頭から追い出した。そう、元の時間にどうやって戻る。それを考えるべきなのだ。

 

ぽんっ!

何かがオレの足にぶつかった。ソフトビニールで出来た赤いボール。

見覚えがある。……オレとみさおが「タイガーシュートごっこ」をよくして遊んだボール。

「あ、ごめんなさい」

声が聞こえる。

懐かしい声。

好きだった声。

大好きな声。

ゆっくりと、必要以上にゆっくりした動作でボールをつかみ、そしてこれまたゆっくりと振り返る。

「…みさお」

「え?」

その少女…みさおは、びっくりしたようにオレの事をみる。

「どうしてわたしのなまえ、しってるの?」

不思議そうに訊ねる。当然だ、オレはみさおからみれば、見知らぬ他人なのだから。

「みさお…」

元気だった頃の、一緒に遊んでいた頃のみさお。

オレの大好きだった笑顔。

オレを支えていた笑顔。

その、笑顔をみたオレは、気がつくと涙を流してた。

「え、え………あの?」

その声で、現実に戻ったオレは、つかんだボールをみさおに渡した。

「あ、ありがとう」

何故か突然涙を流した知らない男に、怪訝な表情を浮かべながらも、特に警戒はしてないようだった。

オレは、なにを言ったらいいか分からなかった。ただ、立ちつくしていた。

「なに? どうしたの?」

あんまりじっとみられたからか、みさおが言った。

「ねえ、君。いま、生きてて幸せか?」

突然、オレは質問した。みさおは、?の表情を浮かべながらもこういった。

「うん、幸せだよ。お兄ちゃんとお母さんとみさおとで、たのしくくらしてるんだ」

本当に幸せそうに言った。

「お父さんはいないのか? 寂しくないか?」

みさおと一緒にいたときには、訊けなかった質問。

「うん…でも、少しだけだよ。こうへいお兄ちゃんがいるもん。」

「そうか」

「でも、こうへいお兄ちゃん、ときどきいじわるするんだよ」

すこし、ふてくされたように言った。オレがみたことのないみさおの表情だ。

「そっか、でもそいつは君のことが好きなんだよ。きっと」

「うんっ! 知ってるよ」

元気いっぱいに答えた。

「わたしも、こうへいおにいちゃん、だいすきなんだよ」

……みさおは、大人だった。オレなんかよりずっと。当時のオレは、良い兄で居続けたいと思った。それは、オレが初めて感じた責任感だった。でも………。

オレは、良い兄であれたのだろうか? みさおはオレといて本当に幸せだったのか? あの最期の日。最期のみさおの言葉。それは………オレに気をつかっての事だったんだ。

こんな、馬鹿な兄を安心させるために、本当に馬鹿な兄に…責任を感じさせないために………。そんな、みさおの気遣いに、気づかなかった…いや、そんなこと考えもしなかった。

本当に、馬鹿だったんだ。………オレは。

「だから、こうへいおにいちゃんと、お母さんとこれからもずっとくらしているんだ」

その言葉が辛かった。でも、ぼくもオレも、みさおには何もしてやれないのだ。

なにも………。

なにも……。

なにも…。

「そうか………じゃ、元気でな」

その場にいるのが、辛かった。背をみさおに向ける。

「あ…」

後ろで、みさおがそんな声を上げた。

「元気でな。腹だして風邪引くなよ…」

そして、オレは振り返ることなく。その家から立ち去った。

………。

ごめんな、みさお。

気づくのが………遅すぎたみたいだ。こんな馬鹿な兄で……悪かったな。

 

ぐにゃり。

またしても、光景が歪む。そう、オレは戻らなくてはならないのだ。オレが存在できる場所、誰かが、オレの好きな人、俺を好きでいてくれる人の元へ………。

ひっしで、その人のことを考えた。………そう、オレが思い浮かべたのは…。

 

 

長森 瑞佳里村 茜七瀬 留美
川名 みさき上月 澪椎名 繭


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