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※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)
「じゃあ、ここでお別れ」
オレに永遠の存在を教えてくれた少女が、そう告げた。
「え? お別れって………」
世界がぐにゃりと歪んだ。
「浩平……」
そして、その少女が消えた。
「うっ…」
その世界は、まずます溶けていくように崩れていく。ひどく気分が悪い。まるでひどく船酔いでもした後かのようだ。終わるはずのない永遠の世界が終わろうとしているのか…?
消えそうな意識でそんなことを考える。いや、この世界は終わらないはずだ。だったら……。
目を開ける。
気持ちよく晴れた空だった。でも、さっきまでいた世界の空じゃない。
「戻って…来たのか?」
あたりを見渡してみる。…違う。オレの住んでいた町じゃない。そして妙に静かだ。周囲に誰もいないかのように、見える。
「まだ、永遠の世界なのか?」
そう考える脇を幼稚園生ぐらいの子供がじゃれ合いながら、駆けていった。
「いや、違う。ここは永遠の世界じゃない」
そう確信できる。大きな根拠はなかったが、いままでずっと、限りある世界と永遠の世界に住んでいたオレにはそれが分かる。
しかし、ここはどこで、いまはいつなんだ?
ん? 妙な違和感。いや、………これは…………………懐かしさ?
そう、オレはこの町に見覚えがあった。ここは………オレが生まれ育った町?
みさおと一緒に生まれ育った場所じゃないかっ!
「この角を、右に曲がると公園…………」
もう、ほとんど消えかけた記憶を引っぱり出し、その町を歩いてみる。そして、記憶通りその場所に、公園はあった。
「懐かしいな……」
その町は、オレが住んでいたときのままだった。とは言っても、懐かしがってばかりも居られない。ここからは遠い中崎町だが、はやく帰って彼女を安心させてやりたい。記憶をたぐり寄せ、駅へと向かう。
と、駅に行こうとするとコンビニが目に入った。
「そういや、今が何年何月何日なのか分からないんだよな」
記憶喪失になったわけでもないのに、こんな目に遭うとは思わなかった。そのコンビニにはいり、やすいスポーツ新聞を一冊買う。
あれ? なんか、目に入った1面記事。……これって、かなり昔にも同じ事なかったっけ? そう思い。新聞の一番上、今日の日付をみる。
86年 5月 12日
……嘘だろ? 愕然とした。もう一度、暦を見る。たしかに86年。10年以上も昔じゃないかっ。どうしてこんな事に…。
………。
……。
………。
でも、まあ、不思議でもないか。永遠の世界は時間の概念がない世界だ。過去に戻ったとしても不思議はない。
まてよ…………10年以上前に戻ったってことは………。
ふと、あることを思いつき。思わず走り出した。
「折原」
その表札が見えた。オレとみさおが育った家だ。おもわず、その中に入ろうとして二の足を踏んだ。いまのオレは、当時のみさおからみれば、他人にしかうつらないはずだ。そんな、混乱をさせるような事はしたくない。
そう考え向きを反転する。大好きなみさおを混乱させるわけには行かなかった。逢いたいという考えを頭から追い出した。そう、元の時間にどうやって戻る。それを考えるべきなのだ。
ぽんっ!
何かがオレの足にぶつかった。ソフトビニールで出来た赤いボール。
見覚えがある。……オレとみさおが「タイガーシュートごっこ」をよくして遊んだボール。
「あ、ごめんなさい」
声が聞こえる。
懐かしい声。
好きだった声。
大好きな声。
ゆっくりと、必要以上にゆっくりした動作でボールをつかみ、そしてこれまたゆっくりと振り返る。
「…みさお」
「え?」
その少女…みさおは、びっくりしたようにオレの事をみる。
「どうしてわたしのなまえ、しってるの?」
不思議そうに訊ねる。当然だ、オレはみさおからみれば、見知らぬ他人なのだから。
「みさお…」
元気だった頃の、一緒に遊んでいた頃のみさお。
オレの大好きだった笑顔。
オレを支えていた笑顔。
その、笑顔をみたオレは、気がつくと涙を流してた。
「え、え………あの?」
その声で、現実に戻ったオレは、つかんだボールをみさおに渡した。
「あ、ありがとう」
何故か突然涙を流した知らない男に、怪訝な表情を浮かべながらも、特に警戒はしてないようだった。
オレは、なにを言ったらいいか分からなかった。ただ、立ちつくしていた。
「なに? どうしたの?」
あんまりじっとみられたからか、みさおが言った。
「ねえ、君。いま、生きてて幸せか?」
突然、オレは質問した。みさおは、?の表情を浮かべながらもこういった。
「うん、幸せだよ。お兄ちゃんとお母さんとみさおとで、たのしくくらしてるんだ」
本当に幸せそうに言った。
「お父さんはいないのか? 寂しくないか?」
みさおと一緒にいたときには、訊けなかった質問。
「うん…でも、少しだけだよ。こうへいお兄ちゃんがいるもん。」
「そうか」
「でも、こうへいお兄ちゃん、ときどきいじわるするんだよ」
すこし、ふてくされたように言った。オレがみたことのないみさおの表情だ。
「そっか、でもそいつは君のことが好きなんだよ。きっと」
「うんっ! 知ってるよ」
元気いっぱいに答えた。
「わたしも、こうへいおにいちゃん、だいすきなんだよ」
……みさおは、大人だった。オレなんかよりずっと。当時のオレは、良い兄で居続けたいと思った。それは、オレが初めて感じた責任感だった。でも………。
オレは、良い兄であれたのだろうか? みさおはオレといて本当に幸せだったのか? あの最期の日。最期のみさおの言葉。それは………オレに気をつかっての事だったんだ。
こんな、馬鹿な兄を安心させるために、本当に馬鹿な兄に…責任を感じさせないために………。そんな、みさおの気遣いに、気づかなかった…いや、そんなこと考えもしなかった。
本当に、馬鹿だったんだ。………オレは。
「だから、こうへいおにいちゃんと、お母さんとこれからもずっとくらしているんだ」
その言葉が辛かった。でも、ぼくもオレも、みさおには何もしてやれないのだ。
なにも………。
なにも……。
なにも…。
「そうか………じゃ、元気でな」
その場にいるのが、辛かった。背をみさおに向ける。
「あ…」
後ろで、みさおがそんな声を上げた。
「元気でな。腹だして風邪引くなよ…」
そして、オレは振り返ることなく。その家から立ち去った。
………。
ごめんな、みさお。
気づくのが………遅すぎたみたいだ。こんな馬鹿な兄で……悪かったな。
ぐにゃり。
またしても、光景が歪む。そう、オレは戻らなくてはならないのだ。オレが存在できる場所、誰かが、オレの好きな人、俺を好きでいてくれる人の元へ………。
ひっしで、その人のことを考えた。………そう、オレが思い浮かべたのは…。
長森 瑞佳 | 里村 茜 | 七瀬 留美 |
川名 みさき | 上月 澪 | 椎名 繭 |