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※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)
カシャァッ
カーテンの引かれる音。
差し込んでくる光。
まぶしい・・・
「ほら、おきなさいよー」
いつも通り長森がおこしにきた。
いつものオレならば、ここで必死になって粘りながらも長森におこされてしまうのだが、今日のオレはひと味違う。
なぜなら寝ていないのだ。
今日からテストなので、勉強をするつもりでおきていたはいいが、ついつい深夜番組に手を出してしまい、今に至っている。
ぐぁ。
・・・駄目じゃん。
「あれ? おきてるんだ」
長森が物珍しそうに言う。
「うむ。テスト勉強をしようとしていて、気がついたら深夜番組を見ていて、はっとしたときは朝だったからな」
「はぁっ・・・」
疲れたようなため息を一つ。
「そんなんで、今日のテスト大丈夫なの?」
「大丈夫だ。休むから」
「なるほど。それなら・・・」
一瞬の間。
「え? 休むの? どこか具合が悪いの?」
「いや、いたって健康だぞ」
「じゃあどうしてだよ」
「いや、休んでれば少なくとも見込み点として前回のテストの7割の点数もらえるだろ」
「浩平前回も休んでるから0点になるよ」
「そのときは前々回の点数で見るんじゃないのか?」
「はぁっ・・・」
「違うのか?」
「違うよ」
本当にそうなのか、試してみたい気持ちもあったが、さすがに本当にそうなるとまずい。
「うーん、仕方がない。学校へ行くか・・・」
「あ、いけない。時間もうないよっ!」
長森があわてて時計を指さす。
「まずいっ! 長森、走るぞ!」
オレは長森に鞄を渡すと、制服に着替えるためにクローゼットの中に顔をつっこむ。
制服を取り出し、一気に着替える。その間わずか10秒足らず。これも日頃の修行のなせる技だ。
「わあ、なんで目の前で着替えるんだよ。わたしがいるんだよ」
みれば長森が顔を赤くしてあわてふためいている。
「えっちだなー、長森は」
「そんなことないもん」
「オレの着替えをみて、あれこれ妄想してたんだろ。いけずだぞ」
「なにを馬鹿なこといってるんだよ。それよりも時間!」
オレは時計をみて愕然とする。
「ばかっ! なんで、もっと早くいってくれないんだ?」
「いったよっ!」
「言い訳なら後で聞く。それより、急ぐぞ」
おれは鞄を長森からひったくるように取り上げると、ダッシュで階段をかけ下りる。
「言い訳じゃないもん! あ、浩平、まってよー」
後ろでなにやら長森が騒いでいるが、無視してダッシュをかける。
教室前で髭をかわして、ぎりぎりで教室に入り込む。
セーフだ。
「んあー、アウトだ。遅刻でつけとくぞ」
容赦ない髭の一言。
ぐぁ。
「おっす、おはよう七瀬」
「うん、おはよう。折原。宿題やった?」
「宿題? なんだそれは?」
全く記憶にない。というか、昨日は一日寝てたような気がするぞ。教室の中の睡眠王こと、前から2番目、左から2番目の男に挑戦してたからな。
結果はいわずもがなだ。きっとあいつは核戦争が起きても寝ているに違いない。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが。
「ひょっとして知らないとか?」
「ひょっとするぞ」
「胸を張っていえた事じゃないよね」
いつの間にか長森が会話に参加している。どうやらこいつはぎりぎり間に合ったらしい。というかあからさまに差別してないか? 髭。
まあいいか。今更遅刻が1つや2つ増えたからと言って別に問題はないだろう。
・・・きっと。
・・・補習くらいは覚悟しとくか・・・
「ところでその宿題ってなんなんだ?」
「そうそう、これなんだけど・・・」
七瀬がごそごそと机の中から一枚のプリントを取り出す。
「って、おい、七瀬もやってないのか?」
「つい忘れちゃって」
「もって帰ってなかったように見えるんだが」
「気のせいよ」
そうか? ってなぜ目をそらす七瀬?
ともかく、オレはそのプリントに目を落とす。
「・・・一団は三人のチアガールによって壊滅させられた、を英訳しなさい・・・か・・・」
「・・・それって・・・」
長森が横で額に汗を浮かべている。
「七瀬に対する挑戦だな。あんな回答をするのはおまえくらいのもんだろうしな」
くわっ!
「あんたがいわせたんじゃあっ! ボケェッ!」
「責任転嫁は乙女のすることじゃないぞ」
「くっ・・・そ、そうかしらって、責任転嫁なんてしていないじゃない!」
つくづくからかいがいのあるヤツである。
結局長森がやってあったので、それを3人で(住井ももちろんやってなかった)写すことになった。
「次からはちゃんとやろうねー、浩平」
「2,3年したら考えておくよ」
「卒業しちゃうよっ!」
「いや、オレはもう2,3年この学校で遊ぶ気だが。居心地いいしな」
「はあ、まったく、何をいってるんだよ・・・」
長森は心底あきれかえっている。
「長森さんも大変だねぇ。こんなの相手にしてると」
いつの間にか沢口が会話に入ってきている。
「おっす、沢口」
「沢口、おまえも宿題か?」
オレと住井がそう声をかける。
「だから、オレは南だっつーの」
「水くさいぞ沢口」
「そうだぞ、沢口」
「うううう・・・」
その場に崩れ落ちる沢口。
「あ、沢口君泣いてる・・・」
「うう、七瀬さんまで・・・」
もはや立ち直れそうにない傷を心に負ったようだ。
しかしなんだな、七瀬にまで沢口と呼ばれるとは、南もすっかり沢口が定着したようだな。
「最近は髭も出席の時、沢口って呼んでるしな」
住井がつぶやく。どうやらオレと同じ事を考えていたようだ。
「髭はおおらかなヤツだからな」
「う〜ん、ちょっと違うような気がするよ」
まあ、髭だからな。
退屈な午前中の授業。しかも数学だ。
自慢じゃないが、オレは4桁以上の数字をみると眠くなる。
デジタルの目覚まし時計だと、文字盤を見た瞬間もう一度眠る自信がある。
・・・本当に自慢にはならないな。
(七瀬、話がある)
オレは目の前に座る七瀬に声をかける。
(・・・なに?)
七瀬が非難がましい視線をオレに送る。
(暇つぶしに枝毛を切るぞ)
やはり授業中の暇つぶしといったらコレに限る。前に切ったときは「断りも入れずに人の髪の毛を切るなぁっ!」などと騒がれたので、今回は断りを入れてやってやろうというオレの涙ぐましい心尽くしだ。
(嫌よ)
と、一言つっけどんに言い放って、前を向く七瀬。
(なぜ? きっと斬新な髪型に生まれ変われるぞ。クラスの中での注目度200%アップ間違いなしだ)
(その斬新な髪型が問題なのよっ!)
肩をふるわせて、何かに耐えるような仕草をする。
・・・ああ、そういうことか。
(七瀬? トイレか?)
「違うって言ってるでしょっ!」
・・・・・・教室の中が水を打ったように静かになった・・・
教室の中から「やだ、七瀬さん・・・」とか「ヒステリーか?」とか言うささやきが聞こえてくる。
ぐぁ。
「あ、先生、そこの式、間違ってますよ、というか・・・」
七瀬が必死になって取り繕うが、無駄だろう。
さて、次の休み時間は速攻で逃げるか。捕まったら命はなさそうだ。
「・・・折原、ちょっと話があるんだけど」
「悪い、七瀬、急病を思い出した」
チャイムが鳴ると同時にオレは席を立ち廊下へと駆け出す。
すまん、七瀬、今度の人気投票ではオレだけはおまえに一票入れてやるからな。
・・・ちなむと前回は髭に入れたんだが。
「・・・急病は思い出せません」
廊下に出た瞬間、そんな声を横からかけられる。
「茜、ぼやぼやしてると命の危険があるから、また後でな」
何か話があるようだったが、とりあえず今は七瀬から逃げることが大切だ。
「捕まえた」
って、捕まってるしぃぃっ!
「まあ、待て七瀬、落ち着け、話せばわかるぞ。きっと」
「話してもわかんないわよ。きっと。だって、折原、人の話きいてないんだから♪」
・・・やばい、声が軽やかだ。
これはもう、怒鳴るとかいうレベルを通り越して怒っている。
さわらぬ神に祟りなしかとは言うが、その神にさわったのはオレだ。
「しかしな、落ち着いて考えてみれば、今回のは自爆だと思うぞ」
「・・・デリカシーってものが足りないのよ、あんたは・・・」
そういえば昔長森にも同じようなことを言われたような気がする。
しかし、七瀬もよくよく考えれば自爆だということに気がついたらしく、なにやら神妙な顔をしている。似合わない表情だが。
「ここは一つ、過ぎたことは水に流そうじゃないか、七瀬」
「・・・つぎはないからね」
そう釘を刺す。
とりあえずは許してもらえたようだ。あきれたのかもしれないが。
ところで・・・次は何がないのだろうか?
・・・やっぱり命か?
まあ、表面上はあくまでにこやかに、オレと七瀬は教室へ戻る。
とたんに巻きおこるヤジの数々。
「ヒューヒュー、あついね」
「みせつけてくれちゃって」
などと騒ぎ立てているヤジ馬どもには七瀬の本性は見えていない。
「ちがうぞー、オレたちはそんな関係じゃないぞー」
「そうなのよ〜」
「今だって、人を一撃でしとめるにはどこのツボをつけばいいか聞かれてたんだぞー」
どすどすどす・・・
廊下に突き出されるオレ。
「北斗神拳伝承者かっ! あたしはっ!」
大差ないと思うが。
「いや、あの場を切り抜けるにはああするしかなかったぞ」
「・・・手段じゃなくて、内容が問題なのよ・・・」
泣くな、七瀬。明日があるさ。
きっと今日よりひどいけど、ずっと続いていくんだろう。
・・・なんだか悪人みたいだな。オレ。
−永遠はあるよ−
−ここにあるよ−
不意にそんな声が聞こえたような気がした。
「七瀬? なにか言ったか?」
「え? 何も言ってないけど・・・」
・・・まあ考え過ぎか?
「教室へ戻るか、七瀬」
「あ、え、うん」
なんだか七瀬の態度がよそよそしいような気がしたが、まあまたヤジられるのがイヤなのだろう。
しょうがないヤツだ。
そう納得してオレは席に戻った。