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※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)
「ほらそこっ!もっと登場人物になりきって!違うでしょ!?その人を演じるんじゃなくて、その人になりきるのっ!!」
オレ達演劇部の年明けは異常に早かった。
1月4日から練習という、公務員並みの出勤内容だ。
それでも、それに反発して部活に来ない奴が1人もいないって言うのは、やっぱり深山先輩の人望が厚いからだろう。
なんせ、このオレがちゃんと出てきているんだからな。
そう考えたら、深山先輩はすごいよな。
「浩平君。早くしてよ〜」
小さな張りぼてを持ったまま、オレに立たされているみさき先輩が音を上げた。
「悪い悪い。それじゃ、しっかり持っていてくれよ」
そう言うと、みさき先輩に支えてもらっている張りぼてに、釘を打ち始めた。
「どうだ?ナグリの扱い方も様になっているだろう」
「ナグリ?」
「ああ。かなづちのこと、大道具業界ではナグリって言うんだ」
「そんな事よりも、早くしてよ〜。結構大変なんだから〜」
みさき先輩は結構大きな張りぼてを支えながら、情けない声を上げた。
☆ ★ ☆
「これで、今日の仕事は終わりだね〜」
みさき先輩の手には、劇で使う小道具が握られている。
今日のオレの仕事は、小物を一通り作り上げることだったのだ。
「そうだな。それじゃ、次の大仕事に取りかかるとするか。おーい、澪ー!」
その声に、他の部員の練習を真剣に見ていた澪がオレの所に走り寄ってきた。
「それじゃ、始めるかっ!」
「・・・」
うんっ!
澪は、この劇で「言葉をしゃべれない少女」と言う役所を演じることになっている。
まさに、澪のために作られた役柄なんだろうが、それでも、言葉無しで、観客に何かを伝える、と言うことは難しいものだ。
そこで、澪だけ個別レッスンとして、オレに見てくれ、と深山先輩に頼まれたのだ。
それに、オレだってただ、深山先輩の元で練習している部員達を見ていたわけじゃない。
見た感じ、どこが悪いかぐらいの判断は付く。
言ってみれば、文句を付けるスペシャリストだな。
「それじゃ、びしばし行くぞ、澪。覚悟しろよ」
「それじゃ、澪ちゃんが可哀想だよ〜」
「何言ってるんだ?先輩。こういうときは、本気にならないと。な?澪」
「・・・」
うんうん。
「それじゃ、まずこのシーンから練習するぞ」
☆ ★ ☆
「はい。それじゃ、今日はここまで。ご苦労様」
深山先輩が手をパンパン、と叩いて、練習の終了を告げる。
「・・・」
はう〜・・・
「澪ちゃん、ご苦労様」
いかにも疲れた、と言う表情の澪に、みさき先輩がねぎらいの言葉をかける。
「よくぞオレの厳しい練習についてこれたな。澪。おまえに教えることはもう無い」
「浩平君は悪いところに口を出してただけだと思うよ」
「・・・」
うんうん。
澪もみさき先輩に同意して、非難の顔でうなずく。
「ぐあ・・・これから、上手に教えられるように努力する・・・」
オレはわざと、しょげたような声で澪に言った。
「・・・」
えとえと・・・
予想通り、澪は狼狽している。
「浩平君は、まず、そう言う何気ない芝居から練習した方がいいかもね」
ぐあ・・・先輩には見透かされていたか。
「ははは・・・」
苦笑いしているオレと、半ば呆れた表情のみさき先輩を見て、澪は何がなんだかわからない、と言う表情をしていた。
「とにかく、ご苦労様。澪。明日も頑張ろうな」
『頑張るの』
うんうんっ!
床に置いてあったスケッチブックにそう書くと、元気よく頷いた。
「さて・・・それじゃ、帰るか」
『かえるの』
うん。
「そうだね。明日も練習だから、寄り道しないようにね。浩平君」
「・・・みさき先輩には、何でもお見通しだな」
「ちょっといいかしら?」
そんな会話をしているとき、深山先輩が声をかけてきた。
「折原君。ちょっとこの後、つきあって欲しいんだけど」