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※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。
※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)
「どう?うまくはずれそうかしら?」
深山先輩が、心配そうに声をかけてくる。もちろん、オレの心配をしているわけじゃなく、張りぼての心配をしているのだろうが・・・
オレは、不要な釘を探し出し、それを一本一本抜いていった。はっきり言って、簡単じゃない作業だ。
でも、なかなか作業に集中できない・・・なかなか、深山先輩の寝顔が頭から離れないのだ。いつもなら、こんな事はなかった。そりゃ、一応は男だから、女の子には興味はある。でも、今まで、長森や七瀬、みさき先輩や澪と、いろいろ女友達はいて、彼女たちに、こうやって意識することはなかった。何故、深山先輩だと、こう意識してしまうんだ?
「折原君!」
「・・・え?」
突然、深山先輩の声。
「そこ・・・違うんじゃない?」
何の話をしているんだ・・・?
「そこの釘外すと、張りぼてが壊れやすくなるんじゃないかしら?」
「あ・・・ああ」
「どうしたの?なんか、ぼーっとしているみたいだけど?」
「いや・・・ただ単に、寝起きが悪いだけだ」
俺はわざとらしく頭を振った。どうしても、深山先輩を意識してしまう・・・それに気付かれないように、今は作業に没頭しようとするオレがいた。
☆ ★ ☆
「ふぅ・・・ようやく、解放されたわね」
オレ達は無事、張りぼてからの脱出に成功して、大道具部屋から出ることが出来た。
廊下で、深山先輩がスカートの埃を払いながら、オレに微笑みかける。朝日がまぶしい。
「だな。悪かったな。オレの不注意で、あんな所に泊まることになって」
「いいのよ。それに、最初の目的はちゃんと果たせたんだから」
ふっ、と、深山先輩の微笑みが朝日に照らし出され、輝いた・・・・様に思えた。
明らかに、いつもとは違っていた。この気持ち。何がきっかけかは知らないが、きっとそうなんだろう・・・
「そう言えば・・・私、荷物を部室に起きっぱなしだわ・・・」
「ついていってやるよ。どうせ、この時間に教室に行っても、誰もいないからな」
時計を見ると、針は7時を示していた。遅くとも、生徒が登校してくるのは、8時からだ。
「それじゃ、お願いしようかしら」
☆ ★ ☆
誰もいない廊下を、二人で並んで歩く。
・・・って言うか、むちゃくちゃ緊張してるんだが・・・
・・・・・・・・
もう、我慢できないぞ。オレは、やると言ったらやる男なのだ。
「・・・折原君?」
オレが歩みを止めたのに気付いた先輩が、振り向く。
「どうしたの?折原君」
言うんだ・・・今言わないと・・・
何故か、そんな焦りが心の中を占めていく。
「先輩・・・深山先輩」
「なに?いったいどうしたのよ?」
「いきなりで、驚くと思うんだけど・・・」
言おう、と決意したときに、はっきりした。オレの心。こんなもんだよな。
「どうも・・・オレ、先輩のことが・・・好きらしい」
言った。そして、その言葉とともに、オレの心は確かなものになった。
「・・・折原君?冗談でしょ・・・?」
「冗談なんかじゃない。本気で言ってるんだ」
「・・・・・・」
先輩は、一瞬驚いた顔を見せた。でも、すぐにいつもの顔・・・・いや、どこか、さめた顔つきに変わった。
「・・・もしかして、何か勘違いしてるのかしら?」
「え・・・?勘違い・・・?何言ってるんだ?先輩・・・」
「私があなたを大道具の点検に誘ったのは、あなたが大道具の責任者だからよ。それに、あなたと私は、演劇部の部長と部員、それ以上でも、それ以下でもないわ。勘違いされると困るのよ。下手すれば、部活全体に影響を及ぼすことにもなりかねないわ」
・・・先輩は何を言っているんだ?勘違い?部活?
「部活なんて、関係ないじゃないか」
「私目当てで部活に出ているようだったら、来てもらわない方がよっぽどいいのよ。私は、演劇部の部長として責任があるし、それ以上に、恋愛に興味なんて無いのよ」
「・・・先輩・・・・・・」
「これ、返すわね」
先輩はオレに歩み寄り、自分の肩に掛けてあった俺の制服を、オレに手渡した。
「わかったわね?私に好意を持ってくれるのは嬉しいけど・・・・・ここまででいいわ」
先輩は、オレに制服を手渡すと、きびすを返した。
そして、そのまま、部室に向かう道を歩いていった。
オレは、朝の日差しが差し込む廊下で、1人、立ちつくしていた。