reason
〜 第10話 〜

 

※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)

 

 

オレ達は、大道具部屋の片隅で見つけた毛布に、二人でくるまって座っていた。きっと、大道具のスタッフが持ち込んだ物なんだろう。

「なんか、端から見ると変だよな。オレ達って」

「ええ・・・そうね」

横にある深山先輩の顔が、オレに向かって微笑みかけてくれる。オレにとって、それだけで十分だった。もう少し時間がたてば、この笑顔が消えてしまうことを除けば。

「そうだ。折原君。頼みたいことがあるんだけど」

「なんだ?」

「演劇部、よろしくお願いね」

「ちょ・・・オレじゃ役不足だと思うぞ?」

「そうかしら?結構素質あると思うんだけどな。折原君」

「・・・わかった。先輩が戻ってくるまで、オレがしっかりしごいておいてやる。戻ってきたら、部員の成長ぶりに驚くぞ?」

「ふふ・・・楽しみにしてるわ」

少し複雑な笑顔を返す先輩。そりゃ、これから消えようって言うのに、大笑いする奴もなんだが。でも、最後まで安心して、微笑んで欲しい。必ず、この世界に帰ってこられるように。

 

☆   ★   ☆

 

朝日が昇ってきたようだ。そして、そのことと同時に、先輩の存在がもうすぐ消えてしまうことを、オレ達は感じていた。

気がつくと、先輩は毛布の中で、オレの腕にしがみついている。オレは、そっと先輩の手を握った。

「・・・」

「先輩。必ず戻ってきてくれ」

交わる視線。その中で、先輩がゆっくりと頷いた。

「よし・・・」

オレは、その頷きに笑顔で答える。

部屋が、朝日に包まれていく。そして・・・

オレの手から、オレの隣から、そして、この世界から・・・

先輩が消えた。先輩の存在が、今消えてしまった。

でも・・・

オレの手には、彼女が存在していた確かな温もりが残っていた。

 

☆   ★   ☆

 

高台の上から、この町を見渡す。オレの存在も、指一本で捕まっている状態だ。

でも、オレはその指を放すわけには行かないんだ。

彼女との約束を守ること。それがオレの全てだった。

身体の感覚が徐々に消えていく。

まだ寒い風邪の感触が。柔らかい太陽の日差しが。

そして、気がつくと、光の中にいた。

目の前には、あのときに盟約を交わしたあの子がいた・・・

 

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