reason
〜 第9話 〜

 

※ このSS(?)は、Tactics制作のWin95版ソフトONE 〜輝く季節へ〜を元にしています。引用文・作品名・名称などの著作権はすべてTacticsが所持しています。

※ あ、あとゲームやってないとたぶん、というか絶対意味不明です。ぜひ買ってプレイしましょう(18歳以上になってからね)

 

人との関係が徐々に薄れていった。

演劇部の連中から忘れられ、みさき先輩や澪から忘れられ、長森は迎えに来ず、由起子さんからも忘れられた。

結果、あの家にはいられないようになり、ここに立っているわけだ。

夜の闇の中、気付くとオレは、学校の校門前にたたずんでいた。

結局、ここが一番俺にとって充実したところだったんだな・・・

そんな事を考えながら、学校の中へ入った。

 

☆   ★   ☆

 

教室、体育館、そのほか、いろいろなところを意味もなく回ってみる。もちろん、どこも人気はなく、しんと静まり返っている。それが、俺の存在を削っていくような気がした。

でも、それは苦痛にならなかった。このまま消えてしまう。それもいいかもしれない。そう思うようにもなっていた。

そして、部室・・・そのドアを開けた。

中は、静寂を守っていた。いつもの騒がしさが嘘のようだった。

オレがここであの連中と一緒にがんばった事実も、もうすぐ事実じゃなくなってしまう。そして、ここで出会ったあの人の存在も・・・

やめよう。考えるのはよそう。オレはもう消えるんだ。全てから解放されて、永い、えいえんの時間の中で生きて行くんだ。

オレは部室を出ようとした。その時・・・窓の外に、明かりを感じた。窓に駆け寄る。

一つの部屋の窓から、明かりが漏れているのだ。見回りの先生か?いや・・・あそこは・・・

気がつくと、オレはその部屋に向かって駆け出していた。

 

☆   ★   ☆

 

間違いない。ドアからも明かりが漏れている。オレは、そのドアを静かに開けた。

中には・・・俺が思ったとおり、その人がいた。

「・・・」

その人は、オレが作り上げた、あの釣り鐘上の大道具を見上げていた。

ここにいることはわかったのに。確信できたのに。そして、会いたくなかった人なのに・・・でも、オレはこの部屋に駆け出していた。

「・・・あ」

その人がオレに気付いた。でも、もうオレ達は、お互いに面識のない人間だった。そのことが、悲しすぎた。

「ごめんなさい。ちょっとお芝居に興味があってね。大道具を見たかったの。勝手に部屋に入ったりして、ごめんなさいね」

彼女はそう言うと、オレの横を通り抜けて、部屋を出ようとした。オレ達は他人なんだ・・・今までのこともすべてなかったとこになるんだ。

「・・・先輩」

思わず、口から言葉が出る。その言葉に彼女が、ドアの前で立ち止まる。

「・・・」

「何で先輩が・・・」

「・・・」

彼女とオレは、背中合わせで立ちつくしている。何でオレは、こんな事を喋っているんだ?もう、オレと彼女の間には、何もないのに・・・

「いや。悪かった。気にしないでくれ」

「・・・ねぇ」

「・・・え?」

「あなたはわかっているはずでしょ・・・?」

え・・・?何でそんなこと言うんだ?

「先輩、オレのこと・・・?」

「私の質問に答えて。わかっているはずでしょ?あなたなら」

背中合わせの言葉が行き交う。それが、オレにとって嬉しい物でも、悲しい物でもあった。

「・・・あなたに私を非難することは出来ないでしょ?」

「・・・」

何も言えなかった。彼女の言葉が、とても痛く感じた。

「答えてっ!私だって消えたい訳じゃないっ!」

背中に、彼女の言葉が打ち付けられる。俺は、ゆっくりと彼女の方を振り返った。彼女は泣いていた。

「先輩・・・」

「辛かったのよ・・・あの頃は、お父さんとお母さんがいなくなったなんて、信じたくなかったの・・・だから、逃げ出したの。自分から目を閉じたのよ。でも・・・今はやるべき事がある・・・でも、もう逃れられないのよ。一度逃げ出したから、もう元には戻れないの・・・」

身を切るような、彼女の告白。オレは、そっと彼女の身体を抱きしめた。

「先輩・・・」

「・・・あなたの告白を断ったのも、あなたに辛い思いをさせたくなかったから・・・でも、あなたも消えちゃうなんてね・・・」

心が軋んだような気がした。後悔の念が、オレの心を押しつぶしそうだった。でも、彼女の方が辛いんだ・・・今、オレに出来ることはこれだけだった。

「先輩。よく聞いてくれ」

抱きしめている先輩に語りかける。オレの腕の中にいる先輩は、とても小さく感じられた。いくら気丈にしていても、こんな小さいからだで・・・本当は、幼い心を引きずって・・・

「オレは絶対に消えない。約束する。だから、必ず戻ってきてくれ」

「・・・」

先輩は頷かなかった。ただ、オレの腕の中で静かにしていた。先輩の涙は、もう止まっていた。

「もう一度言う・・・オレは、深山先輩が好きだ」

こんな、確証のない約束をするしか、オレには出来なかった。でも、これが今出来る先輩に対する精一杯のことだった。

「・・・残された人間は辛いわよ?」

「そんな事、昔にわかっている」

「・・・それでもいいの?」

「それは、俺の先輩としての言葉か?」

「いえ・・・折原浩平って言う、どうしようもない自分勝手な男の子を好きになっちゃった、1人の女としてよ」

先輩はそう言うと、オレの身体に手を回してきた。

ゆっくりと髪を撫でる。先輩が、オレの顔を見上げる。

オレは、先輩の唇に口を付けた。

 

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